実践編 露地野菜における高畝成形について
水田で野菜を栽培する場合、地下浸透が大きい畑地とは異なり、本田機能の入排水の差により高畝にする必要が出てきます。
とくに排水機能に問題のある水田圃場では、「高畝しか選択肢がない」のが現状です。
○参考:水田を利用した野菜づくり
事前準備
●水稲刈取り直後や前作終了後(高畝状態)に作畝する場合は、事前に荒起こしをします。
●土壌の種類によっては(重粘土地帯など)、荒起こしをしない方がよい場合もあります(後述)。
●緑肥(グリーンミエット、ソルゴー等)作付け後のすきこみ・作畝については、緑肥の乾物量が問題となります。緑肥が多量の場合、未熟有機物によるガス障害が出ないよう、十二分に耕起する必要があります。また、定植日が迫っている時には、石灰窒素等の分解促進剤が必要な場合があります。
●作付けがなかった圃場では、雑草の問題が発生します。夏の間の湛水処理や事前の除草剤散布、また、荒起こしによる対策等をしておく必要があります。
「土壌の種類と高畝」
●東北から北陸にかけての日本海側の重粘土地帯では、土壌に水分を含んだ状態で荒起こしを行うと、ロータリーの爪が土塊をつかむことができず、砕土率が低下します。そこで、超砕土ロータリーを使用した一発成形を使用したところ、砕土率が向上することがわかりました。
●西南暖地地域を中心とした干拓や平坦地の水田では、荒起こしを2度行い、その後に成形することで高畝が実現できることがわかりました。
※参考:「熊本県八代版 高うね成形マニュアル(熊本県作成)」(クリックでpdfが開きます)
ロータリーによる耕起作業
●ロータリーを使用する際、爪などの整備や角度、回転速度等の設定が問題となりますが、畝の本数を確保したいという生産者の思惑もあり、必ずしも理想的な爪配置等は、とられていないのが現状です。
●理想的なものとして、超砕土ロータリーや、アップカットロータリー等があげられます。
超砕土ロータリー
排水
●畝間と額縁明渠を確実につないで、畝間の湛水を迅速に排除します。
●畦が長い場合は途中で畦を切り、額縁排水口につなぐように施工します。
●畦と排水口の落差が大きいほど効果的です(10~20mごとにうね間を連結させると理想的)。
畝立て
「畝立て時の土壌条件について」
●作業時に土壌水分が多い場合は土塊が大きくなり、野菜苗の活着等に影響を及ぼします。
●土壌が乾いている状態の作業では、良好な結果が得られていますが、課題として、地域によって作型が限定されること、また、前作終了から今作準備までの期間が短くなることがあげられます。
●近年、気象変動により降水量が増えています。作業の際、作物や、播種や定植等の違いにより、最適な砕土率を見極める必要があります。
「畝立て方法について」
●高畝にする場合、土の確保が必要になります。通路幅を広く取り、畝幅を狭く取ると畝を高くできます。
●水田利用の場合は、とくに耕盤が浅い位置にあるので(平均12cm程度)、土の量を確保するためには、条間を広く取る必要があります(120~130cm)。
●キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー等は2条抱き畝とします。レタス等では、4条植えも可能です。
参考:1条植え(左)と、2条植え(抱き畝)(右)
●ニンジンやタマネギも、多条植えで畝を高くできますが、収穫する際の機械を考慮して条数を考える必要があります。
ロマネスコの植付け(2条植え)