提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

大豆・麦




大豆栽培における高速畝立て播種機等を活用した湿害対策の実演会を開催(埼玉県鳩山町)

2024年08月05日

 埼玉県東松山農林振興センターでは、令和5年度に全国農業システム化研究会事業により、大豆播種における排水対策の徹底と、耕起及び播種様式の違いによる湿害対策の実証を行い、「部分浅耕一工程播種技術」と「高速畝立て播種技術」について比較検討したところである。


(参考)
【埼玉県】大豆栽培における高速畦立て播種機を活用した湿害対策の実証(令和5年度全国農業システム化研究会実証調査)
大豆栽培における高速畝立て播種機等を活用した湿害対策の実演会を開催(埼玉県鳩山町)


 令和5年度は、気象が高温乾燥となり、排水性の改善効果は判然としなかったことから、今年度はほ場を変更し、上記2種類の技術について継続調査を行うこととした。また、令和5年度の実証では、雑草が目立ったことから、その対策として新たに「部分浅耕播種区」(播種1~2週間前に2~3cm程度耕起し、その後部分浅耕播種機にて播種を行う)を取り入れ、当地域に適した安定栽培技術の提案と定着化を図ることとしている。


試験区及び慣行区の概要は以下の通り。
saitama_siken_gaiyo.jpg


 7月10日には、実証農家の「農事組合法人須江機械化組合」(埼玉県鳩山町)の試験ほ場にて播種様式の異なる機械を準備し、「大豆栽培における高速畝立て播種機等を活用した湿害対策の実演会」を開催した。今回準備した播種機は「部分浅耕一工程播種機」と「高速畝立て播種機」の2種類。それぞれの概要、特徴は以下の通り。
表1kai.jpg


 当日は、直前の降雨により蒸し暑い陽気となったが、県普及関係者、JA、資機材メーカー、生産者等、約50名を超える参加者があった。
 始めに、埼玉県東松山農林振興センターの橋本農業支援部長と、実証農家である農事組合法人須江機械化組合の日野岡代表理事から挨拶があった。続いて埼玉県東松山農林振興センターの髙橋主任から実証調査の概要説明、株式会社クボタの羽鹿技術顧問による播種技術の説明、株式会社クボタ、小橋工業株式会社及びアグリテクノリサーチ株式会社の担当者から機械の説明があった後、作業実演が始まった。


sys_20240710_saitama_4077.JPG  sys_20240710_saitama_4108.JPG
左 :参加者へ挨拶をする埼玉県東松山農林振興センターの橋本農業支援部長
右 :株式会社クボタの羽鹿技術顧問による播種技術の説明


sys_20240710_saitama_0915.JPG  sys_20240710_saitama_0944.JPG
左 :試験ほ場の様子。晴れた日でも水が湧く谷津田のため、明渠は2本施工している。
右 :「須江」の地名の通り、古くは須恵器や瓦が生産されていた地域(鳩山窯跡群)。土壌には粘土分が含まれ、乾くと岩のように固まる。


sys_20240710_saitama_4023.JPG
供試品種の「白光」


〇部分浅耕一工程播種技術
202307sys_saitama_z1.jpg


202307sys_saitama_z2.jpg


202407sys_saitama_z5.jpg
部分浅耕播種の耕起爪。両脇と中間にロータリー爪、その間にカルチ爪をそれぞれ取り付けることで、播種する場所だけを浅く耕起することができる。


sys_20240710_saitama_4137.JPG
トラクタ(FT300)+部分浅耕播種用カルチ爪+播種機


sys_20240710_saitama_4216.JPG  sys_20240710_saitama_4207.JPG

benri_movie1.jpg(クリックで動画再生)
部分浅耕一工程播種作業の様子


sys.20240710_saitama_4203.JPG
播種後のほ場の様子


〇高速畝立て播種技術
202307sys_saitama_z3.jpg


202307sys_saitama_z4.jpg


sys_20240710_saitama_4019.JPG
トラクタ(SL540)+高速畝立てディスク(小橋工業 HDR200)+高速播種機(アグリリサーチ HUD-2)


sys_20240710_saitama_4220.JPG  sys_20240710_saitama_4244.JPG
benri_movie1.jpg(クリックで動画再生)
高速畝立て播種作業の様子。トラクタは直進アシスト付きなので、手を放してもまっすぐに播種ができる。


sys_20240710_saitama_4235.JPG
播種後のほ場の様子


 近年は突然の豪雨も増え、大豆播種の好適日はより少なくなっている。また、作付面積の拡大(20~30ha)が進むと一連の作業をスムーズに進められず、播き遅れやその後作業の除草剤散布遅れまで影響が出てしまう。一方で、令和5年度は高温乾燥となり、出芽が遅れる結果となった。
 しかし、令和5年度の実証調査が、栽培農家の意欲向上につながっており、今年度ほ場を変更して調査を行うに至った。今回の実証調査を通じ、近年の異常気象において、今後の地域に見合った栽培技術の確立を期待したい。(みんなの農業広場事務局)