「媛育71号」による密播疎植の移植作業(愛媛県宇和町)
2017年06月08日
近年の主食用米の需要減少や価格低迷により、主食用米以外への作付け転換が必要とされており、国や県では加工用米や飼料用米への生産拡大に力を入れている。
愛媛県でも同様の動きが見られ、県内の酒造メーカーでは、県育成の酒造好適米品種「しずく媛」を麹米とした、県オリジナルの'愛媛酵母EK-1株'を使った清酒造りを行い、オール愛媛の清酒造りに向けて、掛け米に利用できる有望品種の育成に取り組んでいる。
これらの需要に応えるため、愛媛県南予地方局八幡浜支局産地育成室では、今年度、全国農業システム化研究会の事業により、すでに普及している疎植栽培に加え、密播苗に取り組み、さらなる省力・低コストを目指しつつ、収量確保を目標とする。
供試品種は、耐倒伏性がやや強く良質で良食味な「媛育50号」と、当地域で問題となっているいもち病に強い「関東202号」の交配からできた「媛育71号」。多収で作りやすく、玄米タンパク質含有率の低い中生のうるち種で、酒造適性は良好である。
5月10日、西予市宇和町の実証圃場で密播疎植の移植作業が行われた。当日は、管内の普及指導員のほか、県の普及関係機関、JAや全農、近隣農家の参加もあり、感心の高さがうかがえた。
実証区は、1つの圃場(40a)を3分割して調査を行う。
栽培体系は以下のとおりである。
左上 :右上に見えるのが密播苗。箱数削減により保管スペースも少なく済む
右下 :慣行苗(30日苗)に比べ、密播苗は約20日苗のため、少し小さい
左上 :実証調査の説明をする、愛媛県南予地方局八幡浜支局産地育成室の秋山担当係長
右下 :掻き取り爪に苗クリーナーを取り付けることで、密播苗で起こりやすい掻き取り漏れを減らし欠株を防ぐ
掻き取り本数を最少にして目標3~4本/株としたが、作業開始直後は4~5本/株となった。プール育苗で土床に水分が多く含まれ、さらに密播種で苗が重くなり、下へ押さえつけられてしまったためと思われる
左上 :密播苗はおおむね14~15cmで2葉期であった
右下 :6条植え田植機(ZP67)にこまきちゃん(左側)と箱まきちゃんを搭載。ジャンボタニシの問題はないため、右側のこまきちゃんは使用しなかった
左上 :青い棒の右側が実証区1の密播区(株間18cm)、左が実証区2の密播区(株間24cm)
右下 :棒の左が実証区3の密播疎植区(株間30cm)
今後は、密播播種区と慣行播種区の生育の違いを調査していくとともに、疎植と慣行の差も確認していく。また、中間防除として、ドローンの実証も行っていくつもりだ。(みんなの農業広場事務局)