鉄コーティング湛水直播栽培におけるスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)対策の実証調査(熊本県人吉市)
2016年05月31日
水稲の省力・低コスト技術として全国的に広がりを見せる鉄コーティング湛水直播栽培だが、九州地区ではスクミリンゴガイ(以下ジャンボタニシ)による加害の影響を受けるために、普及が進んでいないのが現状だ。ジャンボタニシ対策さえできれば導入したいという生産者の意向は大きい。
熊本県県南広域本部球磨地域振興局農林部農業普及・振興課では、ジャンボタニシ対策資材を活用した新たな対策技術による鉄コーティング湛水直播栽培の現地実証を、全国農業システム化研究会実証調査事業として実施している。
実証調査では、ジャンボタニシ対策資材として「ジャンボたにしくん」を播種同時に散布し、以後、稲の1.5~2.0葉期の初中期一発除草剤の散布にあわせ、入水時に再度「ジャンボたにしくん」を散布する防除体系を実証する。
5月17日(火)、関係機関や生産者ら約20名が参加して、播種作業の実演会を開催した。
左上 :供試田植機はクボタZP67で、6条の播種機「鉄まきちゃん(NDS-60)」を搭載。改良を加え、こまきちゃん2台を設置している
右下 :1台は除草剤「オサキニ1kg粒剤」を散布
左上 :もう1台は「ジャンボたにしくん」を10a当たり2kg散布する。摂食による殺貝効果の発揮と、有効成分による食害抑制効果も期待できる
右下 :播種と同時に、除草剤、ジャンボタニシ対策薬剤、殺虫殺菌剤「箱王子粒剤」の3つの薬剤が散布されるため非常に省力的だ
左上 :ゴルフボールを落とし、ほ場の状態を確認する球磨地域振興局農林部農業普及・振興課の田中参事。ほ場周囲には額縁明渠を施工し、本田へのジャンボタニシ侵入を軽減する
右下 :額縁明渠内には、すでに多くのジャンボタニシが生息していた
左上 :播種後の資材散布状況を確認する参加者
右下 :ほぼ計画通りに、種子、肥料、除草剤、殺虫殺菌剤、ジャンボタニシ対策資材が散布された
雑草対策としては、播種同時の「オサキニ1キロ粒剤」の散布に加え、稲の1.5~2.0葉期(播種後約2週間)に「アクシズMX1キロ粒剤」を散布するとともに、「ジャンボたにしくん」を再度散布する。
本実証調査では、薬剤による化学的防除と、水管理等の耕種的防除を組み合わせ、総合的なジャンボタニシ対策を実施するとともに、鉄コーティング直播栽培技術の検証を行う。調査の結果によっては、熊本県はもちろん九州地区への鉄コーティング湛水直播栽培の普及に大きく貢献できると思われ、今後の成果に期待したい。(みんなの農業広場事務局)