ICT技術を活用し圃場毎に施肥設計をした田植え作業開始(兵庫県加古川市)
2015年06月30日
兵庫県加古川農業改良普及センターは今年度から、全国農業システム化研究会(全国農業改良普及支援協会)による事業の一環として、圃場ごとに施肥設計や作付け計画を行うことのできる、ICT技術を活用した圃場管理システム(KSAS=クボタスマートアグリシステム)の実証調査に取り組んでいる。
当地区は、農業の担い手不足が深刻化しているため、6集落で一つの集落営農法人(農事組合法人八幡営農組合)を設立している。この組合は農地集積を進めているが、112haに圃場が約1,200筆と多いことから、圃場ごとの作業計画や作業の進捗状況の把握が困難であり、収量や品質低下を招いている圃場が見られる。
平成26年度の分析結果では、収量達成圃場は3筆と少なく、また、保肥力の低い砂質土壌で、全体的に土壌成分が少ないことが分かった。そのため今年度は、基肥を緩効性肥料ベースとし、穂肥診断による収量・品質の調節、とりわけタンパク値は目標よりやや高かったため、窒素施肥量を減らした。
このような施肥改善を行うとともに、ICT技術を用いて、10aあたり500kgの目標収量と、玄米タンパク含量6.0~6.5%の品質向上を目指す。
●圃場毎の分析結果と施肥設計
6月15日、八幡営農組合の事務所で昨年度の施肥量を基に今年度の圃場ごとの施肥量をパソコンからKSAS対応田植機へ指示設定を行った。
今までは膨大な数の圃場データを紙面でまとめ、保存していたため、1年間でも相当なデータ量となり、後日見返すことは困難な作業となっていた。しかし、KSASで管理を行うようになってからは、パソコン上に表示された圃場を確認するだけで、その圃場のデータが表示されるため、たいへん楽になったという。また、送られてくるデータにより作業時間を把握できるため、想定よりも長くかかっている場合は、機械トラブル等の可能性も推察でき、不測の事態にも迅速に対応できるようになった。
左上 :事務所内のパソコンから施肥量の設定を行う
右下 :実証調査の打合せをする兵庫県加古川農業改良普及センターの東元担当課長補佐(左)と、農事組合法人八幡営農組合の高井氏(右)
作業開始前にKSAS対応専用モバイルの「農機に施肥設定を送信」ボタンを押すと、自動で施肥量が切り替わる。それから、「作業を開始する」ボタンを押して作業を始めるだけなので、圃場での操作は極めて簡易である。
KSAS対応専用モバイル(京セラ社製「トルク(TORQUE)」)の「農機に施肥設定を送信」で施肥量が40kg/10aに自動で切り替わった
田植え作業はKSAS対応田植機(EP8D)を使用し、除草剤と殺虫殺菌剤はクミアイ化学工業株式会社のトップガンGT 1キロ粒剤51と、ツインターボフェルテラ箱粒剤を散布した。
左上 :初・中期一発処理剤のトップガンGT 1キロ粒剤51(クミアイ化学工業株式会社)
右下 :いもち病に効果のあるツインターボフェルテラ箱粒剤(クミアイ化学工業株式会社)
今後は、収量・品質調査に加え、生育調査や土壌分析も行い、目標収量・品質の達成を目指しながら、次年度以降の作付けに活かせるよう、データ収集にも努める。(みんなの農業広場事務局)