栃木県期待の食用米新品種「とちぎの星」で、鉄コーティング直播栽培に取り組む
2013年06月03日
栃木県下都賀農業振興事務所経営普及部で、平成25年度から栃木県育成新品種「とちぎの星」を用いた鉄コーティング湛水直播栽培による安定生産技術の実証調査がはじまった。
栃木県の水稲直播面積は年々増加しており、平成20年は40haほどであった面積が、24年度には188.4haにまで急伸。そのうち156.5haを鉄コーティング湛水直播栽培が占めている。なかでも、近年は飼料用米やWCSだけでなく、食用米への導入が注目されている。
左上 :鉄コーティング湛水直播栽培
右下 :鉄コーティング処理された種籾(とちぎの星)
■食用米の栃木県育成新品種「とちぎの星」
下都賀農業振興事務所では、稲作農家の経営規模拡大を図るため、省力・低コスト化が期待できる鉄コーティング湛水直播栽培の普及に努めており、管内の直播栽培は、すべて鉄コーティング湛水直播栽培という。
さらに平成24年度のコシヒカリに続き、25年度は「とちぎの星」を用いた鉄コーティング湛水直播栽培による実証圃を設け、緩効性肥料と施肥量を検討し、食用米での安定生産技術の確立を目指している。
とちぎの星は、2002年から栃木県農業試験場が開発し、2011年に登録申請された新品種。耐暑性に優れ縞葉枯病に強く、収穫量の増収が期待できる。
■水稲(主食用)鉄コーティング湛水直播栽培現地検討会
平成25年5月14日には、下都賀農業振興事務所主催(共催:(株)クボタ、全国農業システム化研究会)による水稲(主食用)鉄コーティング湛水直播栽培現地検討会が開催され、栃木県栃木市(旧藤岡町)の実証圃に地域の生産者など関係者約70名が集まった。
左上 :挨拶する前波部長
右下 :薄井農業革新支援専門員の説明を聞く参加者
当日は、下都賀農業振興事務所経営普及部の前波健二郎部長の開会挨拶に続き、県経営技術課の薄井雅夫農業革新支援専門員から、鉄コーティング栽培技術の特徴や除草体系など注意点が紹介され、今後導入を検討する生産者の関心を集めた。
その後実証圃では、クボタ「鉄まきちゃん」「こまきちゃん」を搭載する6条植えの田植え機EP67を用いて、播種同時除草剤散布作業が実演された。
なお、実証圃は43a、畦間30cm×株間18.3cm、栽植密度は60株/坪、6~8粒/点播の設計。除草剤は、オサキニ1キロ粒剤(住友化学)を用いた。
左上 :レーザーレベラーで均平に処理された実証圃
右下 :除草剤は、オサキニ1キロ粒剤(住友化学)
左上 :鉄コーティングされた種籾は点播され、除草剤のオサキニは圃場に均等に効果がでるよう、まんべんなく散布された
右下 :オサキニの剤形
参加した生産者からは、「この作業であれば、直播は軽労化できそうだ」「種籾は雨に流されないのか」といった声が聞かれた。
左上 :実演を注視する参加者
右下 :種籾が浮いたり流されないためには、鉄粉や焼石膏の比率が重要
播種後には、早速、下都賀農業振興事務所の大塚真紀主任が、点播当たりの種籾数の調査や残った種籾、除草剤を計量し、作業状況の確認を行った。
残った種籾(写真左上)や除草剤(写真右下)を計量する大塚主任(左端)と薄井農業革新支援専門員
「昨年のコシヒカリの実証調査では、縞葉枯病が発生してしまったが7俵は収穫できた。2年目の今年は作業にも慣れ、"とちぎの星"なら縞葉枯病にも強い」と実証調査に協力する生産者の期待は膨らむ。
下都賀農業振興事務所では、収量540kg/10a、さらに移植(播種)までの労働時間を慣行栽培の7割を目標としている。(みんなの農業広場事務局)