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園芸学会創立百周年記念式典・記念講演会~百年の歩みを振り返り、次の百年にどのようなイノベーションを起こすのか~

2023年09月08日

 一般社団法人園芸学会は、2023年8月28日、創立百周年の記念式典・記念講演会を東京大学伊藤謝恩ホール(東京都文京区)にて開催した。冒頭、園芸学会会長の田尾龍太郎氏と国際園芸学会会長Francois Laurens氏の挨拶後、記念講演会が始まった。


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 記念講演会Iは、園芸学会元会長柴田道夫氏が「園芸学会百年の歩み」と題して、設立からの歩みや組織の運営、学会誌の発行や学会表彰などについて紹介した。


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 記念講演会IIでは、3氏による講演が行われた。


●リンゴ'シナノゴールド'の育成と商標を活用した海外展開
 長野県農業試験場知的財産管理部長 小川秀和氏
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●未来の野菜供給を支えるスマートな研究開発
 千葉大学大学院園芸学研究院先端園芸工学講座教授 中野明正氏
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●花きの基礎研究から応用研究への展開
 農研機構野菜花き研究部門野菜花き育種基盤研究領域 久松 完氏
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 このうち、「リンゴ'シナノゴールド'の育成と商標を活用した海外展開」では、長野県の県育成品種の権利保護、活用について、興味深い話があったので一部紹介する。


 リンゴ'シナノゴールド'は長野県を代表するリンゴである。甘味、酸味のバランスがよく貯蔵性にも優れた黄色品種として評価され、96年に登録出願、99年に品種登録された、生産現場でも高い評価を受け、全国約900haで栽培されている(15道県・2020年)。
 海外輸出のきっかけは、1997年に長野県で開かれた「世界リンゴ交流会」で、'シナノゴールド'を試食した海外からの参加者のオファーだった。2007年に南チロル果物生産者協同組合(VOG)とヴァル・ヴェノスタ協同組合(VI.P)が海外許諾団体となり契約、試験栽培を経て2013年から大規模商業栽培に向けて検討・交渉が始まった。
 2007年の時点で'シナノゴールド'の品種登録出願から11年たっており、欧州での育成者権が取得できなかったため、商標による知的財産権の活用(許諾)をめざし、2016年に許諾の根拠となる知的財産権(文字商標'YELLOⓇ'と付随する図形商標)を取得した。現在70haで栽培され、EU圏で独占的に販売されている。価格はゴールデンデリシャスの1.5倍から2倍。サブライセンス契約も結ばれ、オーストラリア、アメリカ、チリなどにも栽培および販売地域が広がっている。
 長野県では、2009年に農業試験場に知財管理部を置いて、県育成品種の権利保護、活用などを行ってきた。海外への輸出はハードルが高く時間もかかるが、許諾料など県民へのメリットが大きい。今後も品種の育成と保護活用に取り組んでいく。


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 なお同会場では、28~31日に第4回アジア園芸学会議も同時開催され、海外からの参加者も多く訪れた。(みんなの農業広場事務局)