(野菜茶業研究所)太陽光利用型の植物工場を視察
2012年10月04日
茨城県つくば市にある、(独) 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所の「農研機構(NARO)植物工場つくば実証拠点」を訪れた。ここは、平成23年8月から栽培実証が開始され、野菜茶業研究所が中心となり、農林水産省のモデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業を行っている。
●施設概要
軒高 :5m
栽培室 :(324m2×2、2,162m2×6)
屋根 :散乱光型ナンジフッ素系フィルム
側面ガラス
建築基準法適用
ガス焚き暖房機とヒートポンプ設置(栽培全室)
植物工場というと、閉鎖された空間内で、人工光のもと棚一面に作物が植えられているようすを想像するが、NARO植物工場では、養液栽培と太陽光による栽培法で多収実証に取り組んでいる。従来よりも高度な設備で、より効率化をめざしている印象であった。
栽培作物は、トマト、パプリカ、キュウリで、それぞれ、多収環境制御下と慣行環境下を比較し、実証調査を行っている。キュウリは国内において、養液栽培がほとんど行われておらず、今までにない特徴的な品種により、話題性を高めることで、今後、全国的な消費拡大をめざしている。今年は暑さが長く続いたため、9月下旬からの定植となった。
左 :トマトの多収環境制御下での養液栽培
右 :多収環境制御下で栽培されるパプリカ
周年生産の安定・多収化のため、互換性・拡張性の高いユビキタス環境制御システム(UECS)(※)を積極的に導入。また、太陽エネルギー蓄熱利用技術や、低コスト化が図れる低炭素型生産システムにも取り組み、さらに、作業環境の快適・自動化のため、自動搬送システムや、作物情報、作業者情報などのデータをUECS上で簡易に利用できる手法も取り入れている。
左 :ユビキタス環境制御システムの概略
右 :黒い線上を収穫コンテナが自動で運搬する
植物工場としては非常に大きく、しっかりとした造りとなっており、常に最適の環境条件で、年間を通じて収穫することができる。しかし、最適な環境条件であるが故に、一度害虫や病気が侵入すると、一気に被害が拡大してしまうため、細心の注意を払っているとのこと。生産物の単位重さあたりの生産コストを3割削減できる技術を体系化することを目標とし、施設園芸の高度化・効率化を目指す取り組みが進められている。(みんなの農業広場事務局)
(※)ユビキタス環境制御システム(UECS:Ubiquitous Environment Control System)
LANによる情報通信を利用し、容易に温度や換気窓の開閉などの条件を最適環境下に制御することができるシステム。(自律分散型)