第10回全国農産物直売サミットin福島が開催される
2011年11月10日
~直売所の絆で乗り越え、日本の食と農を未来へつなごう~
福島の生産者や直売所がかかえている困難を共有し、ともに乗り越えていく方策を考えようと、大震災と原発事故により深刻な影響を受けている福島県で開かれた、第10回全国農産物直売サミット。全国から430名が集まり、サミットと交流会(10月27日)、直売所視察(28日)を行って、直売所の使命を再確認しあう集いとなった。
原発事故の深刻な影響は、開催県関係者による挨拶にもうかがえた。佐藤雄平福島県知事は、「直売所は顔が見えて生産者と消費者が交流できるところとして発展し、売上げが毎年増えてきたところだが、3月11日以来の7カ月はつらい状況だ。“営業本部長”として関東を中心に農産物の営業を行ってきた。規定の安全値であると訴えても現実は厳しい」と延べた。県農産物流通課長は、農産物の出荷制限やモニタリングの現状、みえる化のため風評対策のHP「ふくしま新発売。」の立ち上げ等をアピールした。また、今村奈良臣全国農産物直売ネットワーク代表は、「風評被害は無知の不安、未知の不安が起こすもの。これを既知の安心に変える運動が必要だ」と述べた。
「震災に立ち向かう。福島の食と農の底力」の講演を行ったのは、福島県出身の小泉武夫東京農業大学名誉教授。震災のこと、食料自給率の話などをしながら、被災地にエールを送った。「高齢化が進んでいる現状から、若い人をどのように農業にとりこんでいくかが重要」と課題を投げかけた。
つづいて「震災に負けない。素材を活かした商品開発」と題して、会津若松市で山際食彩工房を主宰する山際博美氏が、柔軟な発想から身近な素材を生かして料理を作る大切さ、面白さを語り、作るだけでなくネーミングや売る相手のことも考える商品作りを語った。
パネルディスカッションは、二部に分けて行われた。まず、「復興と再生に向けて。直売所の使命と役割」と題して、被災県の直売所の代表4名(※1)が、震災にどう直面したか、現状はどうか、これからやりたいこと、会場に訴えたいことをそれぞれ語った。「普通であることが幸せだった。原点に返ってやっていきたい。応援団がついている。現実をみて前に進みたい」など心を動かされる言葉がつづいた。
コーディネーターの守友裕一宇都宮大学教授は「困難を乗り越え、それぞれが次の段階に踏み出している。今後は他との違いをどう出すか、ライバル同士どう協力し合うか等にも取り組んでほしい」とまとめた。
後半のパネルディスカッションは、「日本の食と農を支える。直売所の使命と役割」を題して、全国3直売所の代表(※2)が震災後の活動について発表した。共通したのは、「農家が儲かることが一番」「直売所は生産者のものを売るところ」「地元に密着し、安心安全で消費者の信頼を得る」などの言葉。それぞれの特色を生かし、売上げ向上を目指している。また、被災県の農産物を取り扱う直売所もあり、被災地支援で直売所同士が支え合う動きも報告された。
コーディネーターの横田純子(特)素材広場理事長が、「震災を経験して、消費者の意識や農との係わりが劇的に変わったように感じる。絆や地域の力、大切さが見直される中、直売所は生産者と消費者をつなぐ大切な場所という認識を新たにした」と述べた。
■懇親会
福島県内の食材を使った地方色豊かな料理や地酒が並び、あちこちで話の輪が広がった。
■直売所視察
翌日は4コースに分かれて、3~5カ所の直売所を視察した。震災の影響で各直売所の売上は伸び悩んでいるというが、新鮮な野菜や花、加工品等を求めて、早くから買い物客で賑わう直売所も多かった。
また、解散場所の郡山駅前では、「がんばろう!ふくしま」農産物直売所合同フェアが開催されており、市民や観光客が立ち寄って買い物をする姿が見られた。
来年の全国農産物直売サミットは、山口県萩市で行われる。(みんなの農業広場事務局)
(※1)
はたけんぼ(福島県須賀川市)マネージャー 澤山聖美氏
道の駅ふくしま東和(福島県二本松市)代表理事 大野達弘氏
やくらい土産センター(宮城県加美町)組合長 加藤重子氏
紫波ふる里センター(岩手県紫波町)組合長 堀切眞也氏
(※2)
三郷サラダ市(長野県安曇野市)組合長 三澤勇氏
クロスロードみつぎ野菜市(広島県尾道市)副会長 綾目文雄氏
道の駅かなん(大阪府河南町)駅長 阪上勝彦氏