トマトの大規模ハイテク栽培施設に驚き! ~カゴメ(株)加太菜園(和歌山市)の取り組み~
2009年04月20日
殺菌消毒を繰り返し、白衣にエアシャワーを浴び、ようやく入口にたどり着く。中に入ると、たちまちトマトの青臭い匂いに包まれた。
和歌山市郊外にある加太菜園(株)は、大規模ハイテク・トマト栽培施設だ。運営開始は2005年。全国に8カ所ある菜園のひとつで、カゴメ株式会社(以下カゴメ)の直轄菜園である。
トマト加工品を製造販売してきたカゴメは、生鮮野菜事業部(当時、生鮮野菜ビジネス・ユニット)を1998年に立ち上げた。
1)生鮮トマト市場に赤系トマト(自社開発品種を含め)の需要を作り出す、
2)大規模施設園芸栽培に取り組む、
3)市場を通さない流通販売のネットワークを作る、 の3つの目的を挙げている。
大型フェンローハウスは広さ5ha、軒高5.8m。入口からまっすぐに伸びる通路は、奥行きが250mある。両側の培地はそれぞれ100mの長さで、整然と片側160列の棚が並んでいる様子は壮観だ。
ここに約20万本のトマト苗が植えられ、10カ月間に35~40段取りが行える。ヤシガラを培地とする養液栽培を行っており、第3作(2007年10月~2008年7月)では、32kg/㎡の収量があった。
4作目の現在は、チェリートマト(商品名:キッズチェリー)、ラウンド2品種、高リコピントマトが栽培されている。
市場を通さない直接取引が中心で、出荷先のひとつ、オークワ(南近畿のスーパーマーケットチェーン)には、午前中に収穫されたトマトは午後出荷され、翌日には店頭に並んでいる。
従業員は、正社員25名と、パートが100名前後。大部分が地元出身者だ。ここではパート従業員が、割り当てられた範囲や栽培収穫作業をしながら、病害虫の発生といった重要な情報を挙げる「目」となり「耳」となる。棚の列や柱にナンバーがつけられ、「○列の○○柱の右」と場所の特定ができるようになっている。
防除には、天敵や、黄色粘着板や黄色ライトなどの物理的防除資材など、IPMを取り入れている。コストはかかるが、農薬耐性を防ぎ、栽培者にも消費者にもメリットがある。
日本の生鮮トマトの消費は、欧米の先進諸国の半量にとどまっている。「食べ方の提案」と組み合わせながら、今後もカゴメは、日本の消費者に品質良く、おいしいトマトを提案していく方針という。(みんなの農業広場事務局)
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