理想の資源循環型地域社会を目指すバイオマスタウン真庭(岡山県真庭市)
2009年03月26日
「自然からの恵みをたくさん受けているから自然への恩返しをしたい」これがバイオマスタウン真庭のスピリット。
森林面積が80%を占める岡山県真庭市は、その豊富な森林資源を背景に発展した、伝統ある林業の街。この豊かな自然の恵みを生かし、資源を循環させ、保全していくことによる、持続的な循環型社会の構築と地域活性化を目指し、真庭のバイオマスタウン構想が生まれた。
真庭市の取り組みは、化石燃料の使用を削減し、二酸化炭素を吸収する木の廃材を原料としてエネルギーを生み出す、カーボンオフセット、カーボンニュートラルが基本だ。
平成21年2月27日、真庭観光連盟の主催する真庭バイオマスツアーに参加し、真庭市におけるバイオマス資源の活用について見学してきたので、その一部をご紹介する。
●バイオエタノールプラント
三井造船株式会社によるバイオエタノール製造実験が行われているプラント。林業や木材業から発生する廃材を原料として、無水エタノール(99.5%以上)を精製する。このエタノールをガソリンに3%混ぜ、公用車の燃料として利用する実験も行われている。
●発電プラント
銘建工業株式会社の発電プラント。製材工場から排出される端材や樹皮などを燃料として、1,950kw/hの電力を生み出すことができる。工場や事務所内のほとんどの電力をまかない、余剰電力は販売している。光熱費の削減や買電収入により、年間約2億円もの経営的効果を生み出している。
●木質ペレット
製材工場のかんなクズを加工し、燃料である木質ペレットを製造する、ペレット製造機。国内の木質ペレットの約50%を生産しているのも銘建工業株式会社だ。製造したペレットは、ボイラーやストーブの燃料として、20~25円/kgで販売している。
●健康増進施設湯夢
温水プールやスポーツジム等が設置されている市の施設。このプールの温水やシャワー等を供給しているのが、ペレットボイラー2機だ。ペレットボイラーはまだ量産されていないため、1機約1000万円と大変高価だが、従来の灯油と比較すると、ランニングコストが半額程度になるため(平成20年の実績)、耐用年数15年を考えると、十分投資効果があるという。
●花き農家ハウス
花き農家のハウス内に設置された実験用のボイラー。燃料代の削減効果、温度調整や自動運転などの実証調査をしている。ちなみに、灯油1Lと同等の熱量を得るのに必要なペレットは約2kg。約40円のコストで灯油1L分を賄えることになり、燃料代の削減効果は大きい。木質ペレットは、農業向けに出荷が伸びているという。ハウス加温はもちろんだが、牛や馬の敷きワラとしても利用されることもあるそうだ。
このように、バイオマスタウン真庭では、様々な取り組みを行い、一部は採算ベースに十分見合う事業として展開している。そして、バイオマスツアーを産業観光と位置づけ、積極的に観光客を呼び込み、バイオマスタウンを中核とした地域活性化を実現している。さらには、教育にも力を入れ、真庭のスピリットを受け継いでいく、次世代の人材を育成し、理想の資源循環型地域社会を目指し、未来に向かって精力的に活動を続けている。(みんなの農業広場事務局)
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