諫早湾干拓地を訪問
2009年01月30日
ただただ広い。起伏のない、整備された耕地が見渡す限り続いている。農業機械が小さく見える。干拓地には、日本とは思えないような光景が広がっていた。
九州北部を寒波が襲来し、雨交じりの曇天と強風が吹いた1月23日午後、諫早湾干拓地(中央干拓)を訪れた。
左 :干拓地の様子。とにかく広い / 右 :ラップサイレージが置かれた牧草地
諫早干拓の事業は平成4年に着工された。中央干拓地での営農試験が始まったのが平成12年7月。入植者の公募をへて、20年4月から営農が開始された。長崎県は試験場干拓部と県央農業改良普及センター諫早湾干拓支所を現在も常駐し、営農者への支援をおこなっている。
諫早湾干拓地では、「環境保全型農業の推進」と「リース方式による土地分譲」がおこなわれている。
約700haの土地に1000haの応募があり、666haの土地が、41経営体(個人25、法人16)に5年契約でリースされた。リース料は、年間10aあたり1万5000円。
平均経営面積は、個人が7.4ha、法人が30ha。圃場は100m×600mの大区画に整備された上、畜産(飼料作物)、畑作、施設園芸、有機農業の各ゾーンに分けられている。
左 :レタスの露地栽培 / 右 :前面堤防から調整池方向を臨む。手前には一面にアシがはえていた
干拓地は、排水性や乾燥具合がよい。塩分、土壌の硬さ等の問題は、繰り返しおこなわれる緑肥の鋤き込みや耕起によって、克服してきた。ミネラルに恵まれているため、窒素肥料のみでの栽培が可能といわれている。1~2割減肥しても品質的には充分という。
営農開始5年以内に長崎県特別栽培農産物、あるいは有機栽培農産物の認定取得を目ざして、栽培が進められている。
入植者のひとつ、アリアケファーム(株)は、親会社が生産する業務用スープの原料野菜を供給する自社農場のひとつとして、有機栽培ゾーンでタマネギ、長ネギ、ニンジン、ニンニク、ショウガの5品目を栽培している。今年度の収穫は、タマネギでは20haで1400tを見込む。
いずれは葉物野菜も作り、高品質で低価格な農産物を大量生産するのが目標だ。
輪作をして病害を押さえ込みたいが、面積が足りないので、連作せざるを得ない圃場もある。資材等の一層のコストダウンが、今後の課題という。
県の試験圃場では、歩行型4条たまねぎ全自動移植機を使って、ニンジン種子の播種がおこなわれた。固化した種子を入れたポット育苗箱から、苗移植の要領で、タネが確実に移植されていく様子を見た。播種作業の飛躍的な効率化がはかられるため、実用が期待されている。(みんなの農業広場事務局)
左 :ニンジン種子の播種(歩行型4条たまねぎ全自動移植機による) / 右 :マルチの上から糊化したタネが差し込まれる
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