提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

トピックス



【クボタeプロジェクトレポート】遊休農地を再生してしめ縄を売ろう!(千葉県香取市)

2008年10月16日

 「パワクロの威力を見せつけられた」「ホイールトラクタでは無理だった」そんな言葉が参加者から聞かれた、クボタeプロジェクト千葉県香取市貝塚地区における遊休農地再生実演会だった。
 セイタカアワダチソウやアシなどの雑草、クワ等の雑木が生い茂るのは、どこの遊休農地でも似たような条件だが、さらに排水不良の湿田という悪条件のもと、10月10日(金)に「貝塚地区資源環境を守る会」主催による遊休農地再生実演会が行われた。


貝塚地区は谷津合いに水田が展開する  ぬかるみの中、作業を進めるパワクロ
写真 左:貝塚地区は谷津合いに水田が展開する / 右:ぬかるみの中、作業を進めるパワクロ


 写真をみてわかるように、今回の対象となる遊休農地は、典型的な谷津合いの集落であるため湧き水も多く湿田地帯。このぬかるみをものともせず、2台のパワクロ(SMZ85、SMZ76)が力強く除草作業を進めていった。パワクロの牽引力と安定性なくしては、作業は相当困難を極めたことだろう。実演会は、除草作業のみであったが、確実に再生への第一歩を踏み出すことができた。


サイドカッターを装着したパワクロが除草作業を担当  雑木は建機で引き抜く。湿田のためスリップして立ち往生する場面も
写真 左:サイドカッターを装着したパワクロが除草作業を担当 / 右:雑木は建機で引き抜く。湿田のためスリップして立ち往生する場面も


 貝塚地域は、もともと条件不利地帯であることに加え、高齢化や兼業化により管理の行き届かなくなった水田が、転作を期に遊休農地と化し、今や農地95haのうち18%強が遊休農地となっている。
 平成19年度から、農家・非農家を問わず住民全てが参加する「貝塚地区資源環境を守る会」が主体となって、水・環境保全向上対策事業に取り組み、遊休農地再生に着手していたが、今年度、クボタeプロジェクトを活用して、香取市、JAかとり、香取農林振興センター等の関係機関と協力し、遊休農地再生をさらに推進することとなった。


パワクロのおかげで湿田でも作業はどんどん進む  近隣の小学生も実演会を見学に
写真 左:パワクロのおかげで湿田でも作業はどんどん進む / 右:近隣の小学生も実演会を見学に


 香取農林振興センターからは、当集落では昔からしめ縄や宝船等のわら工芸を行っており、復田した農地を活用し、「実取らず」と呼ばれている専用品種の生産を拡大し、工芸商品の開発、販売を広げる構想の説明があった。平成20年に田園空間博物館「まほろばの里」がオープン、平成22年には道の駅もオープンを予定、香取市商工会との連携強化など、この構想を実現する環境も整いつつある。「しめ縄づくり」体験や、小学校への農地の貸し出し、黒米を利用したイネ飾りなど、再生後の利活用のアイディアも尽きない。


伝統工芸の「しめ縄」をバックに、貝塚地区資源環境を守る会の遠藤会長(右)とJAかとり菅谷組合長(左)  「まほろばの里」では、貝塚で出土された土器や、歴史ある農具品などを展示
写真 
左:伝統工芸の「しめ縄」をバックに、貝塚地区資源環境を守る会の遠藤会長(右)とJAかとり菅谷組合長(左) 
右:「まほろばの里」では、貝塚で出土された土器や、歴史ある農具品などを展示


 長い眠りから目覚めた再生農地からは、バッタ、カマキリ、かえる、蛇、サワガニ等々、たくさんの生き物たちがびっくりして飛び出してきた。そこに白鷺が舞い降りて虫たちをついばむ。そして糞を落とし肥やしになる。そんな光景を見て、まさに、今、貝塚の農地が息を吹き返したのだと実感した。(みんなの農業広場事務局)