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クワの新規用途 -果実の利用-

2007年07月17日

 クワは蚕の飼料作物として長年栽培されてきました。最近ではクワの機能性が解明されるにつれて、新たな用途開発とその利用は広がりを見せています。葉を素材とするクワ茶については、血糖値の上昇抑制効果が明らかにされており、既に大手ドラッグストアーの健康食品コーナーなどで販売されています。

 クワの果実は生食用として一般に流通することは、これまでほとんどありませんでした。クワ果実は果皮が薄く、果汁が漏出しやすいこと、日持ちが悪く、室温では短時間のうちに腐敗が進んでしまうことなどの弱点があるからです。このため、クワ果実は主として加工品の素材として用いられています。

 そこで、今回はクワの新規用途の中から、果実の食材化に関する最近の動向について紹介します。


●我が国で初めての果実採取用クワ品種
 農業生物資源研究所には、国内外から収集された1,300種類を超えるクワの品種・系統が遺伝資源として保存されています。

 それらの中から、果実採取用に適した特性を有するものを摘出し、それらの果実特性をさらに改良した果実採取用のクワ品種「ララベリー」(平成15年品種登録、写真1)及び「ポップベリー」(平成16年品種登録、写真2)が育成されました。


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 「ララベリー」は果実の多収性に、「ポップベリー」は果実が特に大型であることに特長があります。

 これらは我が国で育成された初めての果実用クワ品種であり、いずれも植付翌年から果実の収穫が可能で、栽培も容易であることから、いわゆるホームフルーツとしても普及が進んでいます。


●クワ果実の利用と機能性
 クワ果実を素材とする最も一般的な製品はジャムで、少量生産ながら、地域特産品として北海道から沖縄まで、全国各地で生産販売されています。このほかにもワインやジュース、さらにケーキ、ようかん等の菓子類に添加したものなどが製品化されています。

 クワの果実は黒紫色に熟しますが、その色素はアントシアニンです。他の小果樹と比較してクワ果実のアントシアニン含量は高く、「ララベリー」ではブルーベリーの一般的な品種の約3倍含まれています(図1)


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 また、桑果実のアントシアニン含量と抗酸化能には、高い相関があります。健康機能性成分として広く一般に知られているアントシアニンの摂取源として、クワ果実は優れています。

 さらに、「ポップベリー」には、抗血栓作用のあることが動物実験で明らかにされています。


 このようにクワ果実が有する健康機能性についても、次第に明らかにされつつあります。機能性食品としてのクワ果実の利用は、今後ますます高まってくるものと期待されます。


執筆者
独立行政法人 農業生物資源研究所 技術支援室
小山 朗夫
TEL:029-838-8443


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