黄緑色の外観が美しい日本なし良食味新品種「新碧」
2023年08月02日
背景とねらい
新潟県は古くからのなし産地であり、全国有数の消費地でもあります。しかし、開花期の天候不順による着果不良や、春期の人工受粉や病害虫防除などの作業競合が生産振興の妨げとなっていました。そこで、受粉作業のいらない、自家和合性を備えた新潟オリジナル品種の育成に着手し、これまでに「新美月」「新王」(平成25年登録)の赤なし2品種を世に送り出してきました。そして、今回、外観がとても美しく、食味も極めて良好な、新たな青なしの品種「新碧(しんみどり)」を登録出願しました。
育成経過
「新碧」は、平成14年に「瑞秋」と「平塚16号」(通称:かおり)を交雑し、得られた個体から育成しました。令和4年5月に品種登録出願を行い、令和4年9月に出願公表となりました。
品種特性
収穫期は9月中旬から10月上旬で、「豊水」や「あきづき」の収穫期と重なります。果実は600g程度の大果で、玉揃いが良く、黄緑色の果面が美しい青なしです。糖度は「豊水」、「あきづき」並みに高く、酸味が少ないため甘味を強く感じることから高い食味評価が得られています。
栽培面では、花芽の着生が多く、自家和合性であるため、人工受粉しなくても着果が安定します。黒斑病抵抗性であるため無袋栽培も可能ですが、青なしの果面の美しさを出すためには一重袋での有袋栽培が望ましいです。
写真 収穫期の果実(左 :有袋栽培果実を除袋して撮影、右 :無袋栽培果実)
図1「新碧」と競合品種の嗜好性比較
注)選択法により3品種の中から一番おいしいと感じた物1品種を選択した(平成25年、被験者56人)
表2 「新碧」の生態と果実品質
品種導入の効果
人工受粉が不要なため、開花期の天候不良の影響を受けにくく、生産安定に寄与できると考えられます。また、春作業の競合がなくなるため、経営規模拡大が可能となります。
留意点
着果が安定していますので、自家和合性の「新美月」等と同様に開花前の除芽で摘果作業の省力化を図る必要があります。
接ぎ木苗の供給は、新潟県内の農業者に限定し、令和5年秋以降に開始される予定です。
執筆者
新潟県農業総合研究所園芸研究センター育種栽培科
主任研究員 若桑咲子