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温海かぶ-400年の歴史を誇る、焼畑栽培の伝統野菜

2023年01月27日

特徴と由来

●山形県鶴岡市

 温海(あつみ)かぶは、山形県鶴岡市温海地域(旧温海町)で栽培されてきた伝統的な野菜である。シベリアまたは中国東北部から伝来したとされる西洋カブの一種で、寛文12年(1672年)成立の書物『松竹往来』に「温海蕪」の記述があり、最低でも400年以上に及ぶ栽培の歴史があると考えられる。現代でも伝統の焼畑で栽培が行われている。
 根部は扁平で、表面が鮮やかな濃い紫赤色で内部は白色、直径5~10cm程度。肉質は締まっており、漬物(甘酢漬け)にすると歯触りが良く絶品である。

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収穫された温海かぶ

産地の動向

 出荷量は気象条件により年次変動があるものの、おおむね年間100t程度を維持している。斜面で焼き払い作業を行う等の重労働であることから、生産者の高齢化に伴い栽培面積は微減傾向にある。
 生産拡大のため、生産者や関係団体で設立した「焼畑あつみかぶブランド力向上対策協議会」では、新規生産者確保を目的とした次世代農業チャレンジ事業でのベテラン生産者による栽培指導等、各種支援を行っている。今年度も新たに1団体が事業を活用して栽培に取り組んでおり、今後の生産拡大が期待される。
 また、鶴岡市では地域の小学生が種蒔き・収穫イベントを通して、伝統野菜を守っていく意識づけを行っている。

栽培方法

 栽培手順は次のとおり。

【地ごしらえ】
梅雨明けの7月中下旬、山林の伐採跡地や原野を刈り払い、枝葉を1カ月間乾燥させる。

【焼畑・播種】
8月中旬、風がなく、作業後に適量の降雨が予想される日を見計らって焼畑作業を行う。斜面の上から下に向かって燃え残りがないようにゆっくりと焼いていく。焼畑終了後、土が熱いうちに種子を蒔く。

【間引き】
9月中旬、適当な株間となるよう間引きを行う。

【収穫】
10月中旬から収穫が始まり、雪が根雪となる11~12月頃まで続けられる。収穫後は農協等を通して主に地元の加工業者に出荷され、漬物として加工販売されている。

【採種】
春先の4~5月、温海かぶの花が咲き誇り、6月に採種を行う。採種を行っている温海地域一霞(ひとかすみ)集落では、温海かぶ以外のアブラナ属植物を集落内に植えない決まりごとを守り、他品種との交雑を防いでいる。

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温海かぶの栽培圃場

食べ方

 甘酢漬けが定番である。温海かぶ2kgに対して、5倍酢120ml、砂糖20g、塩60gを使用する。酢に砂糖、塩を溶かし、カブと一緒に容器に入れ、ふたをして重石をのせる。10日ほどでカブの赤みが漬け汁に出てくるので、容器内のカブの上下をよくかき混ぜる。この頃から食べ始めることができる。

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温海かぶの甘酢漬け

執筆者
千葉更索
山形県庄内総合支庁農業技術普及課 主任専門普及指導員

●月刊「技術と普及」令和3年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載