津田かぶ-シャキシャキとした食感とみずみずしい甘み
2023年01月23日
特徴と由来
●島根県松江市
津田かぶの特徴は、神の国=島根を連想させる勾まが玉たま状の形と食味の素晴らしさにある。来歴については明らかではないものの、松江藩祖松平直政公時代から栽培されていたと伝えられる。別名「大目かぶ」「近江かぶ」と呼ばれていたことから、滋賀県の「近江赤斑かぶ」の系統が導入され、長年の栽培で今日の形に変化したと考えられている。
利用はほぼ漬物に限られるため、松江市内の漬物業者との契約栽培が定着している。当地方において津田かぶ漬けは冬の食卓になくてはならない一品であり、安定した消費がある一方、その食味の良さから島根県を代表する年末年始の贈答品として全国に配送されている。
勾玉状の津田かぶ
産地の動向
津田かぶはその名のとおり、松江市津田地区で栽培されてきた。中海から宍道湖に注ぐ天神川沿いの土地は砂質壌土あるいは粘質壌土地帯であり、肥沃で比較的地下水位が高かったため、地上に抽根する特性に合致し、この地に定着したと考えられる。
戦後に化学肥料が普及し、土壌センチュウ被害などで生育不良になったことや、施設園芸の導入により津田地区での栽培は減少。対岸に栽培の中心が移り、今日では松江市内で広く水田裏作として栽培されている。
栽培面積は、多くの農家が自家用程度に栽培しているため正確には把握できていない。一方、生産者の高齢化等で契約栽培が減少する中、15年前から漬物業者が企業参入し、中海干拓地で大規模栽培に取り組んでいる。
はで干しは冬の風物詩
栽培方法
鮮やかな濃紅色をした10cm程度の扁球型のカブで、内部の肉質は緻密で一部に赤み(さし)が入っているものが多い。
8月下旬から9月下旬にかけて、条間45cmの2条に軽く播種溝を切り、手または播種機を利用して種子間隔を平均2cm程度に播種する。播種後60日(10月下旬~12月下旬)を目安に、根径6~7cm、葉身長45cmの基準に合うものから順次収穫していく。3回目の間引きで本葉6~7枚時に株間18cm程度に株定めをし、一本立ちとする。
在来種で遺伝的に十分固定していないため、良品を生産するには播種量を多くし、間引く過程で不良系統の株を取り除くことが大切である。また、品質の良い株は収穫せず、開花後に次年産用種子として採種している。
松﨑邦之
島根県東部農林水産振興センター農業振興部 主任農業普及員
●月刊「技術と普及」令和3年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載