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大野紅かぶ-北前船で伝搬された道南の伝統野菜

2023年01月20日

特徴と由来

●北海道北斗市、函館市ほか

 全国的に伝統野菜が注目されている中、北海道道南にも江戸時代に北前船でもたらされたカブがある。主に函館市近郊の北斗市(旧大野町)で栽培されていたため「大野紅(あか)かぶ」として広く知られている。道南では単に「赤かぶ」と呼ばれ、自家採種した在来種の系統や種苗会社が販売する系統が赤かぶとして道南一帯で栽培されている。
 代々自家採種してきた赤かぶだが、在来系統の赤かぶは明治時代に青森県から入植した時に持ち込まれた系統であることが確認されている。現在、大野紅かぶと確認できる系統は、種苗会社が戦後に道南で入手した種子を、今日まで採種、販売している系統のみとなっている。

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大野紅かぶ

産地の動向

 令和2年度は函館市、北斗市、知内(しりうち)町を中心に約25戸(約10ha)が販売用として赤かぶを栽培している。主に函館市場や直売所に出荷され、漬物として使われることが多い。

特徴及び栽培方法

 鮮やかな濃紅色をした10cm程度の扁球型のカブで、内部の肉質は緻密で一部に赤み(さし)が入っているものが多い。
 栽培は比較的容易で、道南では7月25日~8月15日に播種(株間18~20cm×条間28cm、畝幅72cm)、本葉が2~3枚頃に間引きする。球径が10cm前後になる10月中旬以降に収穫する。
 採種は、形質の良いカブを凍結しない室(むろ)等で保管し、次年度の春に複数のカブを定植し、抽台させて自家採種を行う。

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出荷時の荷姿

食べ方

 道南での赤かぶの伝統的な食べ方としては酢漬けや千枚漬けなどの漬物があるが、ここでは酢漬けを紹介する。

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函館赤かぶ千枚漬

 1週間ほど屋外に干したカブを洗い、水分を拭き取り樽に並べる。
 塩:砂糖:酢=2:10:5で合わせた調味液を注ぎ重石をする。
 1カ月ほどで食べ始められるが、2~3カ月頃が食べ頃となる。

 赤かぶの漬物は、現在でも年末年始に食べられることが多く、道南の食文化に深く根づいた伝統野菜である。

執筆者
山口和彦
北海道渡島農業改良普及センター 所長

●月刊「技術と普及」令和3年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載