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勘次郎胡瓜-柔らかさと瑞々しさが人気の「最上伝承野菜」

2021年06月16日

特徴と由来

●山形県真室川町

 勘次郎(かんじろう)胡瓜は、山形県北東部に位置する最上地域の真室川町で古くから栽培されている在来のキュウリである。長さ20cm前後、重量200gほどで収穫する。一般的なキュウリと比べると収量はやや少ない。茎葉の色は薄いが葉は大きく、不規則な飛び節成りの性質がある。果実はずんぐりとしていて、色は薄い黄緑色で黒いぼがある。水分が多く柔らかい食感で、食味はえぐみが少なく瑞々しい。
 最上地域では、現在も自家採種している地域特有の野菜・豆類などを「最上伝承野菜」として地域資源化を図っており、勘次郎胡瓜もその一つに認定されている。「勘次郎」という名は種を伝承してきた真室川町の姉崎勘次郎家の屋号からつけられた。明治の頃、姉崎家へ嫁いだ女性が嫁入りの際に種を持参したことが栽培の始まりである。

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瑞々しく癖がない勘次郎胡瓜

栽培方法

 苗を植え付ける場合は、4月下旬に播種、5月下旬に定植して6月下旬から収穫する。直播きの場合は5月中旬に播種を行う。8月中旬から下旬にかけて、採種もすべて生産者が行っている。採種の際には果実が地面に着いて腐敗するのを防ぐため、2番成りの果実を用いる。
 葉が大きく風の影響を受けやすいことから、周囲に防風ネットを設置したり、風よけになる植物を植えたりしている。そのほか収量を確保するための対策として、日当たりや風通しをよくするために古い葉を落とす(摘葉)、脇芽の生育が旺盛なため、3本立てに剪定をこまめに行うといった工夫がされている。出荷の際は黒いいぼが果実を傷つけ、見た目を損なってしまうため、いぼを落とした上で発送している。

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薄黄緑の色とずんぐりした形が特徴的

産地の動向

 勘次郎胡瓜の栽培・販売は「真室川伝承野菜の会」の会員により行われている。真室川町で栽培されているさまざまな在来品種の種の保存や販路拡大のために組織された同会は、担当者を決めて採種を行い会員に頒布する、目ぞろえ会を開いて出荷規格の統一を図るなどの取り組みを行っている。現在は会員のうち約20名が栽培を行い、平成30年度の出荷量は4t弱であった。市場には出荷しておらず、産地直売所や県内外の青果店、飲食店等へ販売している。

食べ方

 水分の多さ、柔らかさから生食に向いており、塩とオリーブオイルをかけたり生ハムを巻いたりと、洋風な食べ方もおいしい。また、ピクルスや塩漬けにしても色がきれいなまま変わりにくい。癖が少なく調理しやすいため、真室川町の菓子店ではジュレに加工して販売するなど、飲食店のみならず幅広く活用されている。

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勘次郎胡瓜のカッペリーニ(左)とジュレ(右)

執筆者
山形県最上総合支庁 農業振興課

●月刊「技術と普及」令和元年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載