糠塚きゅうり-八戸の夏の風物詩として復活を遂げた伝統野菜
2021年06月10日
特徴と由来
●青森県八戸市
糠塚きゅうりは、先人が藩政時代に参勤交代の途中で種子を持ち帰り、当時、野菜の供給を担っていた青森県八戸市糠塚地区に植えたことが始まりと言われている。一般的な細身のキュウリよりも薄い緑色をしており、形はずんぐりして太く短い。1株当たりの収穫量は10本程度と少ないが、標準的な収穫時の長さは約20cm、直径は約5cm、重さは約500gにもなる。独特のシャキシャキとした食感と苦みが最大の特徴である。
収穫期の糠塚きゅうり
産地の動向
昭和30年頃までは、八戸市でキュウリといえば糠塚きゅうりを指していたが、細身のキュウリに比べて収穫量が少ないこと、寒さや病気に弱く栽培が難しいこと、収穫翌日には薄緑色の皮が黄変してしまうため小売店等が敬遠したことなどから生産者が少なくなり、ほとんどの小売店から姿を消した時期がある。
市では種子の継承と生産技術の伝承を図るため、平成26年2月に市内の生産者からなる「八戸伝統野菜糠塚きゅうり生産伝承会」を立ち上げ、現在は9人の生産者が参加している。生産伝承会設立後は生産量も増え、八戸市の夏の風物詩として復活を遂げ、市内の小売店等でもよく見かけるようになっている。
戸田瞳
八戸市農林水産部 農業経営振興センター 技師
●月刊「技術と普及」令和元年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載