黒滝白きゅうり-江戸時代から栽培されている「大和の伝統野菜」
2021年06月04日
特徴と由来
●奈良県吉野郡黒滝村
黒滝白きゅうりは、奈良県吉野郡黒滝村で栽培されており、江戸時代から現在まで種子が受け継がれてきた。収穫適期の果実は全体が白色で、長さは約13cmで一般のキュウリと比べてやや短く、重量は約80gである。えぐみがなく、皮が薄く、コリコリした食感が特徴である。
戦前から県内で生産が確認されている品目として、平成26年度に「大和の伝統野菜」として県から認定された。
黒滝白きゅうり
生産の状況
現在、黒滝白きゅうりの栽培農家戸数は44戸、面積は約20aで、生産量は約1・5tである。主な作型は露地栽培で、4月上旬に播種、5月上旬に定植、6月下旬から8月下旬にかけて収穫する。栽培管理は一般のキュウリとほぼ同じだが、在来品種につき耐病性がないため、主要病害であるうどんこ病、べと病等の防除が重要である。
7月には村農業委員会主催で立毛品評会が開催され、当課普及指導員が審査員となり、生育、管理、品質、病害虫対策に関して評価することで、黒滝白きゅうりの生産振興および栽培意欲の向上を図っている。
また当課では、栽培技術の向上を目的に5月と6月に栽培講習会を開催しており、生産者の技術研鑽の場となっている。
定植時の栽培講習会
利用方法
黒滝白きゅうりは、古くから黒滝村で漬物用として自家消費されてきた。収穫後、約1カ月間塩漬けし、その後ぬかに数カ月間漬け込む。これを「ひね漬け」と呼び、食べる前に水に数分間浸し、好みの塩加減で茶粥と一緒に食されてきた。
現在は村内在住の女性で構成される食の6次産業化プロジェクトチーム「ねぇのごっつぉ」が村内の契約農家から黒滝白きゅうりを仕入れ、漬物に加工したのち村内にある農産物直売所で「白きゅうりひね漬け」として販売している。また、浅漬けなどの商品も開発中である。
その他、農産物直売所や市場仲卸業者に向けた青果販売、村内レストランが食材として利用するなど販路が拡大しつつある。
商品化された「ひね漬け」
生で食べてもシャキシャキとした歯触りで甘みもあり、最近では若い世代を中心にサラダや浅漬けなどで手軽に食べることも増えてきた。加賀太きゅうりは伝統野菜とはいえ、時代に合わせて食べ方が日々進化を続ける、今後も楽しみな食材である。
長城利彦
奈良県南部農林振興事務所 農業普及課 主査
●月刊「技術と普及」令和元年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載