晩生カンキツ新品種「瑞季(みずき)」
2019年12月03日
育成の背景
広島県は瀬戸内の冬季温暖な気候を活かした中晩生カンキツの栽培が盛んです。ハッサクや「安政柑」の発祥の地でもあり、古くから重要な特産品として栽培されてきました。これらのブンタンに由来する品種は、在来品種での栽培が中心であり、種が多いことや皮がむきにくくて食べづらいことが課題です。また、4月以降が成熟期となる高品質な品種は極めて少ないため、これらの課題を解決する新品種の育成が求められています。
そこで、ブンタンの風味を有し、種が少なくてカットフルーツ等として食べやすい、良食味の晩生品種を育成しました。
育成の経過
「瑞季(みずき)」は、広島県立総合技術研究所農業技術センターにおいて、比較的種子が少なく良食味の「水晶文旦」を種子親として、香りが良く良食味で無核紀州型無核性の「サザンイエロー」を花粉親として2003年に交配し、京都大学との共同研究により育成した品種です。2015年からは農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業にて、地域適応性等を検討した結果選抜され、2018年3月7日に品種登録出願を行い(出願番号32920号)、2019年11月20日に品種登録となりました(登録番号27604号)となりました。
品種名称は、果汁が多く、瑞々しい新緑の季節が成熟期であることに由来します。
品種特性
樹勢は中程度で、樹姿は直立性と開張性の中間です。とげは多いですが短く、樹齢が進むと消失する傾向にあります。カンキツかいよう病の発生は少ないです。後期落果は少なく隔年結果性は低く、着果量は中程度です。果実は洋梨形~短卵形で、果形指数は100前後です。着色は良好で、着色始期は9月29日頃、完全着色期は12月2日頃で「河内晩柑」より早く、果皮は鮮やかな黄色となります。
果実重は400~500g程度で「河内晩柑」より大きく、果皮厚は約10mmです。ブンタンの爽やかな風味を有しており、わずかな苦みがあります。果肉歩合は58.6%で「河内晩柑」と同等で、果肉は柔らかく多汁で、カットフルーツに適しています。種子は2個/果程度で少ないです。
3月に収穫して貯蔵すると、4月中下旬には糖度は12%程度、酸度は1%程度となり、食味は良好です。
適応地域および栽培上の留意点
これまでの地域適応性試験(広島県、高知県)では、いずれの地点でも安定して着果し、良食味の果実が生産されており、適応地域は広いと考えられます。ただし、晩生種であり樹上越冬で食味が向上するので、冬季温暖な地域での栽培が望ましいです。貯蔵果実は5月中旬以降になると、す上がりが発生する場合があるので、温度・湿度に注意します。かいよう病の発生は少ないですが、苗木や風雨の強い地域では適宜防除を行います。
本品種は、苗木の供給地域を限定せず、全国での栽培が可能です。
執筆者
広島県立総合技術研究所 農業技術センター 果樹研究部
金好純子(かねよしじゅんこ)