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中津川いも-囲炉裏で焼いた「中津川いも田楽」は絶品!

2017年12月13日

特徴と由来

●埼玉県秩父市大滝地区

 「中津川いも」は、埼玉県秩父市大滝地区を中心に栽培される、小ぶりなバレイショです。皮は薄く淡い桃色で、芽は赤く、花は薄紫、大きさはメークインの4分の1程度で、やや細長い形状をしています。肉質に粘りがあり身は締まっており、貯蔵性はよいですが、そうか病に弱く、収量は50kg/a程度です。
 秩父地域には、他にも皮が赤紫色の「紫いも」と呼ばれる別品種があり、これも「中津川いも」と呼ばれることがあります。保坂和良博士(現帯広畜産大学)が「中津川いも」と「紫いも」のDNAを分析した際、「中津川いも」は普通バレイショと同じ葉緑体DNA(T型)を持つことから、明治以降に導入されたものだろうと推定されています。
 来歴は定かでなく、雁坂峠を越え、山梨県から武田信玄の落人が入れた説や、日露戦争で捕虜となった大滝村(現秩父市大滝)出身の兵士が背のうの下に隠して持ち帰り中津川地区で栽培したのが始まりとの説などがあります。

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中津川いも

食べ方

 煮ても蒸してもくずれず、串に刺しても割れないため、地元産のみそやえごま等のタレをつけた「いも田楽」として食されています。三峰神社周辺の売店や大滝地区の民宿などで食べることができ、観光客にも人気があります。家庭では、煮くずれしないのでカレーや肉じゃがにする人もいます。収穫したイモは、ほぼ全量地元で消費されますが、JAちちぶ等、地元の農産物直売所の一部で購入が可能です。

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中津川いもの圃場

栽培方法と産地の動向

 標高400~500m以上の準高冷地が適地といわれ、斜面畑でほぼ無肥料、無農薬栽培が行われています。4月初めに植付け、7月ごろ収穫されます。種イモは自家更新で、中津川、栃本など大滝地区内や市内の吉田太田部(おおたぶ)地区などの山畑で栽培されていますが、総栽培面積は定かではありません。
 当センターでは、「いも田楽」の特産化、産地化を図るため、収量を確保しようと標高の低い平場の地域で試作してみましたが、地力が高い圃場ではイモが大きくなり、ねっとり感が薄れてしまいました。栽培適地では農家の高齢化が著しく、急斜面の圃場での作業が困難など、生産量の拡大が見込めないことから、「中津川いも」の特性を確保した大々的な産地づくり構想は断念されました。現状では売店や民宿が、農家との契約栽培により必要量を確保している状況です。平場でも特性が出せる栽培方法がないか、今後の課題となっています。

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いも田楽

執筆者
根岸七緒
埼玉県秩父農林振興センター 普及指導員

●月刊「技術と普及」平成28年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載