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下栗芋-南信州・天空の里で育つ、小ぶりで実がしまり味が濃厚なバレイショ

2017年12月04日

特徴と由来

●長野県飯田市上村下栗

 下栗(しもぐり)芋はピンポン玉サイズの小ぶりなバレイショで、粘質でありながらでんぷん価が高く、締まった肉質と濃厚な味を併せ持っています。
 『日本のチロル』とも称される長野県飯田市上村下栗の標高1000m、最大傾斜38度の急峻な南向きの斜面で栽培されています。白イモと赤イモの2系統があり、主に栽培されるのは白イモですが、赤イモには冬を越すと甘みが増す特徴があります。休眠性が浅く、夏に収穫してすぐ植えなおすと、秋にもう一度収穫できることから、『二度芋』とも呼ばれています。
 平成19年には『信州の伝統野菜』に選定されました。書物に残っている限りでは70年、口伝では100年以上も昔から、下栗の地で栽培されています。また、現在日本で栽培されるバレイショは、明治以降アメリカ経由で伝来したものが主流ですが、DNA調査等の結果から、下栗芋はそれ以前の江戸時代に、オランダ人によって持ち込まれた品種がルーツであることが示唆されています。

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下栗芋

産地の動向等

 平成15年に下栗住民の暮らし・文化・景観の継承と発展を目的とした組織である『下栗里の会』が設立され、下栗芋生産の面でも伝統的な栽培体系の維持に取り組んでいます。
 とくに下栗芋は、かつて種イモの自家増殖を繰り返すこと等によりウイルス病が蔓延し、収量の低下が問題となっていたことから、信州大学、普及センター等と連携した茎頂培養によるウイルスフリー芋の生産・再配布に取り組むとともに、ウイルス病にかからない管理方法の継続的な呼びかけなどで、安定生産を図ってきました。さらに『下栗里の会』が中心となったPR活動など、さまざまな取り組みにより、下栗芋は『食材』から地域を代表する『特産品』へと、着実にステップアップしていきました。
 平成28年現在、下栗は住民数100名余りでありながら、その景観、文化、郷愁等から年間7万人の観光客を集める地域となっており、下栗芋も重要な観光資源として、観光客の舌を魅了しています。

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下栗集落の景観

食べ方

いも田楽(長野県選択無形民俗文化財)

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材料(2人分)
・下栗芋12個
・えごま味噌(えごま15g、みそ50g、砂糖50g、酒小さじ2)

作り方
①下栗芋を洗って皮付きのまま鍋に入れ、箸が通る位までゆでる。
②えごまはフライパンで、3粒ほどはぜるまで軽く煎って香ばしさを出す。
③すり鉢でえごまをすり、みそ、砂糖、酒を加えなじむまでさらに続ける。
④竹串に①のイモを3個ずつ刺し、炭火などでこんがりと焼く。芋の皮に焦げ目がついたら、えごまみそを塗りもう一度さっと焼いたらできあがり。

その他にも、砂糖醤油で甘辛く炒めた『煮ころがし』、油で素揚げしネギ味噌とあえた『ネギ味噌あえ』など、さまざまな食べ方があります。
ゆで・揚げ・焼き、どれもおいしい下栗芋ですが、粘りが強いことからポテトサラダ等にはあまり使われていないようです。地域では、イモそのものには手を加えずに下栗芋本来の『形・サイズ・肉質・濃厚さ』を活かしたシンプルな料理が多く楽しまれています。

執筆者
土田河
長野県下伊那農業改良普及センター 技師

●月刊「技術と普及」平成28年12月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載