ニンニク周年供給のための収穫後処理技術
2017年10月12日
背景とねらい
ニンニクは10月頃に植付けが行われ、翌年6月下旬から7月に収穫されます。収穫されたニンニクは1カ月程度乾燥され、その後貯蔵されます。乾燥後のニンニクは常温貯蔵では2~3カ月で萌芽や発根が起こります。以前は、根や芽の伸長を抑制する植物成長調整剤(エルノー剤)を使用し、常温貯蔵していましたが、2002年にこの剤の農薬登録が失効したことに伴い、新たな収穫後処理技術の開発に取り組むことになりました。
技術の概要
●氷点下貯蔵温度の検討
ニンニクは10℃以下の貯蔵条件では、温度が低いほど、萌芽・発根の抑制効果は高いが、低すぎるとくぼみ症(写真1)などの低温障害や凍害(写真2)の危険性が高まります。
萌芽・発根を抑制しつつ、凍害や低温障害を回避するためには-2℃程度での貯蔵が望ましいことが明らかとなりました(表1)。
写真1 ニンニクのくぼみ症 (上 :正常なニンニク、下 :くぼみ症のニンニク)
●乾燥温度の検討
くぼみ症の発生には氷点下貯蔵温度以外に収穫後の乾燥温度も影響しています。昼間は約35℃、夜間無加温、終日通風条件にする「テンパリング乾燥」にすることで、青森県で従来行われていた30~35℃の連続加温・通風条件の「連続乾燥」よりも、くぼみ症の発生が大幅に抑制されました(表2)。
テンパリング乾燥は連続乾燥よりくぼみ症の発生が抑制され、乾燥にかかる燃料消費量が削減されるメリットがありますが、乾燥期間が5~10日程度長くなるデメリットもあります(表2)。
まとめ
テンパリング乾燥と-2℃の氷点下貯蔵を組み合わせることにより、高品質なニンニクを周年供給することが可能になると考えられます。
なお、本試験の一部は新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「高品質国産ニンニクの周年安定供給を実現する収穫後処理技術の開発」において得られた成果です。詳しくは「ニンニク周年供給のための収穫後処理マニュアル」に掲載されているので、そちらも参照してください。
執筆者
今 智穂美
地方独立行政法人 青森県産業技術センター野菜研究所 栽培部 主任研究員