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杉谷とうがらし -曲がった形と柔らかさが特徴

2016年10月31日

特徴と由来

●滋賀県甲賀市甲南町杉谷地区

 杉谷とうがらしは、滋賀県甲賀市甲南町杉谷地区で明治時代以前から栽培されてきた伝統野菜です。
 果実の形はシシトウに似ていますが、他のトウガラシと比べて果皮が薄く、収穫を迎える頃には9割以上の果実が先づまりし、先の曲がった形状となります。
 しかし、その特徴が市場出荷には向かず、長い間、杉谷地区の家庭や一部の料亭でしか食べられることはありませんでした。

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曲がった形が特徴

栽培方法

 各農家が、前年度採種した種子を3月中~下旬にパイプハウス内の温床に設置したセルトレイに播種し、4月上旬からポリポットに鉢上げして、さらに育苗します。
 定植は5月中旬~6月上旬に行われ、ひもやフラワーネットで誘引し、込み合ったところは摘葉摘芽します。収穫は7月~10月に行われます。

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杉谷とうがらしの収穫時期は7月~10月

食べ方

 最もシンプルな食べ方は炒め物で、家庭ではよく食べられています。へたと種子を取り、縦長に千切りして、フライパンに油を入れて炒めます。水分が出たらちりめんじゃこを入れ、全体に火が通ったら火から下ろし、塩ふき昆布を全体的にまぶします。
 また、県内の旅館では滋賀県産にこだわった懐石膳の一品として提供されています。

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杉谷伝統野菜を使った家庭料理

産地の動向

 平成25年に前身である「杉谷なすび部会」から「杉谷伝統野菜栽培部会」へと名称を変更し、「杉谷とうがらし」、「杉谷なすび」、「杉谷うり」の生産販売に取り組んでいます。
 産地が杉谷地区に限定されており、生産量が増えない中、部会設立時より中心的な存在であったベテラン部会員の引退が続いています。
 近江の伝統野菜の一つとして知名度は高まり、販売先の引き合いも増えていることから、それに応える生産体制の安定が課題となっています。

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杉谷伝統野菜(杉谷とうがらし、杉谷なすび、杉谷うり)

執筆者
宇野弘子
滋賀県甲賀農業農村振興事務所農産普及課 副主幹

●月刊「技術と普及」平成27年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載