提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

注目の農業技術



ひもとうがらし -細く長く親しまれてきた大和の伝統野菜

2016年10月28日

特徴と由来

●奈良県・県内全域

 奈良県では、古くから県内で生産が確認されており、地域の歴史・文化を受け継いだ独特の栽培方法等により、「味、香り、形態、来歴」などに特徴を持つ野菜を「大和の伝統野菜」として認定しています。
 ここで紹介するひもとうがらしは「大和の伝統野菜」のひとつで、伏見群に属する辛トウガラシとシシトウとの雑種から選抜されたと推察されています。県内で栽培されているものには複数の系統が存在します。収穫果実は、太さが直径5mm程度、長さが10~15cm程度です(写真1)。また、濃緑色で皮が柔らかく甘みがあるのが特徴です。 

201609dento_himo_01.jpg
写真1:収穫前のひもとうがらし

栽培

 県内では、半促成栽培(ハウスで3月に定植、収穫期間は5~7月)と露地栽培(露地で5月に定植、収穫期間は7~10月)が行われています。実生苗を用いるため、半促成栽培では前年に太陽熱消毒を実施した圃場を選択すること、露地栽培ではナス科連作圃場を避けること等が土壌病害対策の重要ポイントです。
 株間50cm程度で定植を行い、定植後の管理はピーマンの栽培に準じて行っています。整枝・剪定は、第1分枝より下の腋芽は全て取り除き、第2分枝の3~4本を主枝としてヒモで誘引し、その後は放任としていますが、枝が混み合ってきたら間引き剪定を行います。高温や土壌の乾燥条件下では、尻腐れ果、日焼け果、辛味果、生理落花等の生理障害が発生しやすくなります。長さが10cm程度を超えたら収穫しますが、収穫が遅れると果実が固くなり、辛みが出てくることがあります。

食べ方

 ひもとうがらしは、甘味があり、シシトウのような苦味がないのが特徴です。また、食感がしっかりしており、ピーマンと同じく油との相性が良いことから、天ぷらや炒め物などの料理に適しています。昔から農家の自家消費用として作られるつくだ煮は、夏定番の一品として親しまれてきました。また、県内でもひもとうがらしを使用している料理店があります。写真2と3は、その料理メニューの一例です 。

201609dento_himo_02.jpg  201609dento_himo_03.jpg
ひもとうがらしのペペロンチーノ(写真2・左)と、ベーコン巻きしょうが焼き(写真3・右)

産地の動向

 ひもとうがらしは、古くから自家消費用として栽培されてきましたが、流通関係者等からの強い要望もあり、近年ではスーパーや直売所等でも販売されるようになりました。収穫作業に多くの労力を要し、農家1戸あたりの栽植面積が小さいため、栽培面積は県内全域で約2ha程度です。しかし、ひもとうがらしを含め「大和の伝統野菜」を食材として扱う店舗や料理店が増えてきていることから、有利販売に結びつく可能性を秘めていると考えられます。県としては面積拡大を図るため、今後も、県内へのPR活動はもちろん、県外にも情報発信を行っていく必要があると考えています。

執筆者
安川人央
奈良県農林部農業水産振興課農業技術支援係 主査

●月刊「技術と普及」平成27年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載