香川本鷹 -やみつきになる旨辛さ、伝統発掘とストーリー提案による町おこし
2016年10月26日
特徴と由来
●香川県・県内全域
地元では豊臣秀吉からの拝領品であるとの言い伝えがあるトウガラシで、七味の老舗「やげん堀中島商店」(東京)には、江戸初期に讃岐の国からトウガラシを仕入れていたという記録が残っています。さらに平賀源内の著書「蕃椒譜(ばんしょうふ)」には、香川本鷹の特性に類似する上向きの結実をして、果実の長さが5寸近くになる「本高」の品種名と果形のスケッチが残されています。品種名としての公式な記録は、昭和29年発行の園芸学会誌に鷹の爪群の大果系品種として香川本鷹が分類されています。
果実の長さが12cmほどになり、果実が上向きに着果するのが特徴です。草姿は節間が長く草丈が大きくなる特性があります。信州大学松島教授の遺伝子解析においても、類似品種グループ内で唯一上向き着果をする品種として報告があります。
上向き着果する香川本鷹
栽培方法
播種は3月上旬の温床育苗で、定植は5月上旬の露地定植が基本作型です。施肥は、基肥の窒素成分量で10a当たり5kg程度が目安です。
栽培は、草姿が大きく樹勢が旺盛なため、施肥量が多すぎると不受精果が多くなりがちです。このため、支柱や誘引の手間を省くと、台風等の風により枝折れや倒伏の被害が出るので注意が必要です。
食べ方
香川本鷹は、「うどん県」香川県民のソウルフードの薬味として使用されてきたことは当然のこと、郷土料理の鮒のてっぱいにも使われてきました。
香川本鷹の情報発信を始めたのが平成15年からですが、全国の消費者から毎月何件か問い合せを受けることが増えてきて、日本人のトウガラシ好きに驚かされます。中でもオリジナルソース、焼きトウガラシなどに好適で、消費者から聞いた共通の評価は「やみつきになる旨辛さ」にあるとのことで、大手ネット検索サイトでナンバーワンのトウガラシになっている背景は、独特の風味にあったようです(検索ヒット数62万件・平成27年7月現在)。
香川本鷹を使った商品の一部
産地の動向
香川本鷹の栽培は香川県全域で行われるようになりました。この中でも西讃農業改良普及センター管内が主力で、高齢者向け作物として半島と島しょ部の町おこしを積極的にしかけ「一富士(ブドウ・藤稔)二鷹(本鷹)三茄子(三豊ナス)」を提案、高齢者のわずかな栽培面積を積み上げ、170aの栽培になっています。(平成28年10月現在)
引き合いの強い農産物である反面、買い手市場になりやすく、一般の流通に向かない面があります。これは、1回の取引量が小さいこと、生果の需要の場合は実需の側に必要量を決められること、さらに、乾燥品に加工しても香りと色など風味の保持期間が短いことから、売り方が課題となっています。
三豊市詫間町荘内のトウガラシ農家
糸川桂市
香川県西讃農業改良普及センター 次長
●月刊「技術と普及」平成27年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載