提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

注目の農業技術



剣崎なんば -クセになる辛さと旨さ!まぼろしのトウガラシ

2016年10月21日

特徴と由来

●石川県白山市剣崎町

 「剣崎(けんざき)なんば」は、藩政時代から栽培されている在来のトウガラシ品種で、石川県金沢市の南西に位置する白山市剣崎町において、明治末期から昭和30年頃を中心に広く栽培されてきました。その後徐々に減少し、一時は自家用程度となりましたが、地元JAによる平成2年の転作作物掘り起こし運動を契機に、再び生産振興が行われるようになりました。
 果実は一般的なトウガラシと比べ細長く、12~15cm程の長さがあり、蝋引きしたような艶のある赤色です。真っ赤に熟れた果実は、全国でも有数の激辛トウガラシとして地元種苗会社が太鼓判を押すほどの逸品で、辛さの中にもまろやかな甘みが残るため、調味料や漬け物の辛み付けなどに適しています。

201609dento_kensaki_01.jpg
激辛、細長、艶のある赤色が特徴の「剣崎なんば」

栽培方法

 4月中下旬に播種、6月中旬に定植し、収穫は8月下旬から10月下旬まで続きます。栽培方法は、一般的なトウガラシに準じます。
 種子は、平成21年に発足した「剣崎なんば保存愛好会」が採種圃場を設け、優良系統の選抜や、保存を行っています。

201609dento_kensaki_02.jpg
収穫直前の剣崎なんば

食べ方

 生鮮や粉末の香辛料に加工して一般的なトウガラシとして利用するほか、地元JAでなんば味噌や葉の佃煮などの加工品を製造しています。
 また、愛好会に属する「剣崎なんば生産組合」(23戸、20a)では、平成24年から地元企業と連携し、剣崎なんばを練り込んだチョコレートや餃子などの加工品を開発し、販売しています。

201609dento_kensaki_03.jpg
可愛らしいパッケージのチョコレート「ちょこっとなんば」

産地の動向

 剣崎なんば生産組合は、地産地消イベントをはじめ、県内の商談会などに積極的に参加して、剣崎なんばや加工品のPR、販路拡大に努めています。
 加工品は、「ちょこっとなんば」や「白山レッド餃子」など、ネーミングやパッケージが秀逸なことから人気を博し、「ちょこっとなんば」はモンドセレクション銀賞を受賞するなど、伝統野菜のブランド化の優良事例となっています。
 昨年は、剣崎なんばを用いた料理コンテストを開催し、新しい食べ方を探るなど、消費拡大に意欲的に励んでいます。毎年少しずつではありますが生産者も増加しており、一層の生産拡大が期待されます。

執筆者
岡田憲一郎
石川県石川農林総合事務所 担い手支援課長

●月刊「技術と普及」平成27年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載