提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

注目の農業技術



あじめコショウ -その辛さが人を呼び、地域を元気にするトウガラシ在来種

2016年10月14日

特徴と由来

●岐阜県中津川市福岡地区

 「あじめコショウ」は岐阜県中津川市福岡地区で、約400年前から栽培される野菜です。コショウと名が付いていますが、この地域ではトウガラシをコショウと呼んでいて、トウガラシの一種です。一方、「あじめ」については諸説ありますが、地域内を流れる付知川に生息するアジメドジョウに外観形状が似ていることから、アジメドジョウに似たコショウ(トウガラシ)として、「あじめコショウ」と呼ばれるようになりました。
 本種の特徴として、一般的なトウガラシに比較して3~5倍という辛さが挙げられます。この辛さは風味と表現できる食味品質であり、これに魅了されて愛好家組織「好辛倶楽部」には、200名以上の会員が集うこととなりました。なお、「あじめコショウ」は、品質面の特徴と栽培の歴史をもとに、岐阜県の飛騨・美濃伝統野菜認証を受け、青果から加工品までさまざまな用途で生産出荷されています。

201609dento_ajime_01.jpg
飛騨・美濃伝統野菜「あじめコショウ」

栽培方法

 3月下旬から4月上旬に播種し、5月下旬から6月上旬に露地圃場へ定植します。栽培管理はトウガラシ類に準じておこないますが、過湿条件を嫌うことから、排水性については注意が必要です。
 青果の収穫は7月上旬からで、8月中旬以降は赤く色付き始めた果実を獲ることができます。なお、果実は長さ18cm前後、重さ5~6gで、株あたり収量は果実で200本程度となっています。
 「あじめコショウ」は自家採種により栽培されますが、トウガラシゆえに他種と交配しやすく、系統維持が重要です。現在、「好辛倶楽部」において、優良系統の選抜と採種用親株の栽培管理、そして採種によって系統が維持されています。

201609dento_ajime_02.jpg
7月上旬から収穫期を迎える圃場

食べ方

 「あじめコショウ」は青果を焼き野菜や和え物として食する一方、乾燥したものは薬味として利用されます。近年は「あじめコショウ」入りのおかず味噌、ミニトマトと混ぜたピリ辛風味のケチャップ、「あじめコショウ」入りレトルトカレーなど、風味に優れる特徴を活かし、さまざまな加工品として商品開発されています。

201609dento_ajime_03.jpg
風味に優れる特徴を活かした加工品が人気

産地の動向

 現在、岐阜県飛騨・美濃伝統野菜の認証を受けた「好辛倶楽部」会員17名が中心となって、約40aで生産されていますが、地域在来種の系統維持を考える上からも、親株の選抜と維持が重要となっています。「好辛倶楽部」代表の安保洋勝氏は自ら系統選抜に取り組んでいますが、生産組織内での選抜に関する目揃えや、採種技術の習得が求められます。
 「好辛倶楽部」では本品目を核として、郷土料理学習会など活発な地域活動に取り組んでいます。また、管内の農業高校と加工品を共同開発するなど、活動は6次産業化および食育活動にも及んでいます。
 農業普及課では、辛さが人を呼び、地域を元気にしている「あじめコショウ」の継続的な栽培に向け、系統選抜と品種維持を中心に支援をしていく予定です。

執筆者
田口誠
岐阜県恵那農林事務所農業普及課 技術主査

●月刊「技術と普及」平成27年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載