万願寺とうがらし -京都を代表する大型トウガラシ
2016年10月11日
京の夏を彩るトウガラシ
●京都府中丹地域・山城地域
京の伝統野菜をはじめとする京野菜のなかでも、トウガラシは夏を代表する京野菜です。京都には、万願寺とうがらしや伏見とうがらし、鷹ヶ峯とうがらし、田中とうがらし等の特徴ある多くの在来トウガラシがありますが、中でも万願寺とうがらしは、もっとも盛んに生産されています。
「万願寺甘とう」の荷姿
特徴と由来
万願寺とうがらしは、長さ15cmにもなる大型のトウガラシで、大果になっても肉厚の果肉はやわらかく、甘味があります。
果形の形状は、肩部が一部くびれ、少し湾曲しているのが特徴です。名称は、万願寺とうがらしを育んできた舞鶴市中筋地域の地名「万願寺」に由来しており、大正時代に、在来の品種が交雑したものから選抜された結果、現在の優秀な品種が誕生したといわれています。
また、京のブランド産品制度がはじまった平成元年から認証されている産品で、京野菜の代表でもあります。
産地の動向
長年にわたり、日本海を臨む舞鶴市の特産として大切に栽培され、近隣の福知山市や綾部市を含む中丹地域で栽培されるようになりました。近年では京都府南部の山城地域でも栽培されています。
また、中丹地域から出荷される万願寺とうがらしは、「万願寺甘とう」の名称で地域団体商標を取得し、京のブランド産品として親しまれています。
栽培方法
施設を中心に露地でも栽培され、春に苗を定植し、5月から10月までの長期間にわたり安定的に出荷されています。近年では、アザミウマ、ハダニ、アブラムシの害虫防除に天敵製剤の導入が進んでいます。
現在、普及指導員と研究所職員が連携し、アブラムシ防除への天敵テントウムシ導入に向けた現地実証に取り組んでいます。
食べ方
甘味のある肉厚の果肉がやわらかく、大果で食べ応えがあるので、そのまま焼いたり、素揚げにするとおいしく食べられます。また、おばんざいとして煮たり、炒めたり、詰め物をして揚げたりと、おいしく食べられる調理方法がさまざまあります。
京都をはじめとした近畿圏だけでなく、首都圏へも出荷しており、全国的にも万願寺とうがらしを目にする機会が増えてきました。京都では、甘くて辛味のないトウガラシであることが消費者に周知されていますが、首都圏では「辛くないですか」と質問をされることもあり、より多くの方に万願寺とうがらしのおいしさを知ってもらおうと、消費宣伝活動に取り組んでいます。今後も、万願寺とうがらしの増産を図り、消費拡大に努めていきます。
左 :万願寺とうがらしの素揚げ / 右 :京都市中央卸売市場でのセリ
佐藤隆司
京都府農林水産部 流通・ブランド戦略課 農業革新支援専門員
(写真提供:(公社)京のふるさと産品協会)
●月刊「技術と普及」平成27年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載