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ぼたんこしょう -生でも焼いても炒めてもほど良い辛さが癖になる、信州の伝統野菜

2016年10月07日

特徴と由来

●長野県中野市永江地区

 「ぼたんこしょう」は、ナス科トウガラシ属のピーマン型トウガラシで、ピーマンよりも高い抗酸化活性を持ち、辛み成分のカプサイシン、ビタミンA、Cの他、豊富なミネラルやポリフェノール、ギャバが含まれています。
 肉厚な果実の先端周辺には深い溝があり、複雑な形状が牡丹の花のように見えることから「ぼたんこしょう」と呼ばれるようになりました。
 冷涼な気候を好み、標高800m以上の地域でないと辛くならず、また大きくもなりません。 トウガラシのような辛さと、ピーマンのように果肉に甘みを持ち合わせているのが特徴です。

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ぼたんこしょうの果実

産地の動向

 北信州の斑尾山の麓、中野市永江地区を中心に昭和初期から自家用として栽培が続けられてきました。平成20年にぼたんこしょうの保存と普及を目的に「斑尾ぼたんこしょう保存会」を設立。同年長野県の「信州の伝統野菜」に選定され伝承地栽培認定を受けました。
 平成24年には6次産業化に取り組むため「ぼたんこしょうファーム」を設立。ファームの6次産業化の取り組みにより、ぼたんこしょうの知名度は高まり顧客が増え、需要拡大により栽培面積の増加が期待されます。これと言って現金収入のない当地区にあって、ぼたんこしょうは収入の見込める作物となってきています。

栽培方法

 4月上旬に苗床に播種して苗を育て、6月中旬ごろ圃場に定植します。7月下旬から収穫が始まり、霜の降りる11月まで続きます。
 種子は各農家が採種し受け継がれてきましたが、現在では「ぼたんこしょう保存会」が系統を統一し、採種から共同育苗を行い、生産者に供給しています。
 栽培は3~4本仕立てとし、ネットを張り固定して倒伏を防ぎます。
 他の管理は一般のピーマン栽培に準じますが、施肥は有機質肥料と緩効性肥料の組み合わせにより、基肥主体で行っています。

食べ方

 この地方に伝わる郷土料理「やたら」として食べます。生のぼたんこしょう、ミョウガ、ナスと大根の味噌漬けを細かく刻み、食べる前に混ぜ合わせ、ご飯の上にたっぷりかけて食べます。調味料等は一切使わない野菜のふりかけは絶品です。他に焼いても(姿焼き)、炒めても(あぶら味噌等)、煮てもおいしく食べられます。
 また、ぼたんこしょうファームでは6次産業化にも取り組んでおり、「ぼたんこしょう味噌」「ぼたんこしょう粕漬」「なめ茸ミックス」等を生産販売しています。

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左 :郷土料理「やたら」 / 右 :「ぼたんこしょう味噌」

執筆者
山本繁範
長野県北信農業改良普及センター 普及指導員

●月刊「技術と普及」平成27年10月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載