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東海地方で初めてパン・中華めん用として育成された硬質小麦品種「ゆめあかり」

2016年09月01日

研究の背景とねらい
 愛知県の小麦生産量は、18,000~20,000tで、その大部分は日本めん用として利用されています。今後自給率向上をめざした小麦の作付拡大を図るためには、利用が進んでいないパン・中華めん用途への利用拡大が必要ですが、加工適性の高い品種の開発は進んでいませんでした。

 そこで、本県の転換畑での麦作に向く、日本めん用品種並みの耐湿性、耐穂発芽性、赤かび病抵抗性を持つ、パン・中華めんへの加工適性が高い品種「ゆめあかり」を育成しました。その育成の経過と特性をご紹介します。


育成の経過
 「ゆめあかり」は2001年に「東北205号(後のハルイブキ)」を母、「関東123号(後のタマイズミ)」を父として交配し、グルテニンサブユニットに関するDNAマーカーを用いた遺伝子型調査によりパン・中華めん用硬質小麦としての生地物性の向上を図るとともに、穂発芽性、耐湿性、赤かび病抵抗性が「農林61号」並みに強い品種として選抜育成されました。


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特性の概要
(1)形態的及び生態的特性
 熟期は「きぬあかり」よりもやや晩く「農林61号」と同等で、愛知県では"中生"に属します。「農林61号」に比較して稈長が15cm程度短く、耐倒伏性に優れます。「農林61号」に比べ、穂長は長く、穂数は少ないです。穂発芽性は"難"、耐湿性は"中"、赤かび病抵抗性は"中"で「農林61号」と同等です。収量性は「農林61号」と同等か、やや多収です。


主な特性
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201607_yumeakari_02.jpg  201607_yumeakari_01.jpg
左 :上 :ゆめあかりの草姿
 :ゆめあかり(左)と農林61号(右)


(2)粉質及び加工適性
 製粉歩留は高く、篩(ふるい)抜けは良好で、粉色は、黄色味がやや強いのが特徴です。アミロース含量タイプは通常型に属します。製パン性に関与する高分子量グルテニンサブユニット5+10を持ち、製パンに適した生地の強度が得られます。


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ゆめあかりで作ったパン及び中華めん


成果の活用について
 「ゆめあかり」は 2013年5月に品種登録され、2016年秋から、愛知県で奨励品種として一般栽培が開始される予定です。


※本品種は、「農林水産省指定試験事業」および「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」を実施した成果です


執筆者
愛知県農業総合試験場 作物研究部 作物研究室
伊藤幸司