じゃぼん-さわやかな酸味を地域が受け継ぐ
2016年03月22日
特徴と由来
「じゃぼん」は、広島県の瀬戸内海沿岸に位置する東広島市安芸津町周辺において100年前から栽培されていると言われていますが、詳しい来歴は解っていません。自家消費用として庭先や畑の隅に1、2本植えられ、果汁が市販酢の代用として使われてきました。
他の香酸カンキツに比べて比較的大玉(約200g)で果汁が多く、鳥獣被害、寒害に遭うことはほぼ皆無で、独特の香りを有し、貯蔵性が高いことが知られています。
果汁の風味がまろやかで、12月には糖度が11度を超え、クエン酸は5%程度になります。
じゃぼんの果実結果状況
栽培方法
樹は開張性で、結果期に達するのが早く、豊産性で、古くから放任に近い状態で生産されてきました。病害虫に強く、隔年結果性が低いため、作りやすいとされています。
栽培に関する知見は少なく、不明な点が多い状況ですが、県研究機関との連携による栽培法の確立、大玉生産に向けた摘果基準の作成、着花の安定化を進めており、平成25年度から栽培指針の作成に取り組んでいます。
食べ方(機能性)
果実は、基本的に酢として果汁を使用します。レモン、カボス、スダチと同様に牡蠣、揚げ物、焼き魚、酎ハイなどに絞る、鍋物のつけ汁などがあげられます。
生産拡大を進めるためには大量に使う用途が必要であり、加工品づくりを進めています。「じゃぼん」を使った、ジュース、ジャム、菓子の試作などがあります。
「じゃぼん」の果汁には、発ガン抑制効果が注目されている「オーラプテン」が多く含まれており、機能性に対する関心が高まっています。一方で、果皮の活用に関しても機能性成分の分析を進め、活用を検討しています。
加工品づくり じゃぼんストレートジュース(左)と じゃぼん&はちみつジュース(右)
産地の動向
平成23年度「じゃぼん推進協議会」が設立され、JA芸南を中心に生産拡大、加工品づくりに取り組んでいます。
生産拡大については、試作の拡大というレベルで、年間数百本程度ですが、植栽が進んでいます。加工品づくりは、広島大学、食品関係研究機関との連携や試作の委託などによって進めており、品種登録についても検討しているところです。
こうした香酸カンキツは、各地に固有の品種・系統が受け継がれているものと思われます。本格的な生産拡大はこれからですが、「じゃぼん」は古くから地域で栽培され、気候、風土に根差しており、新たな特産品となるように関係者で努力をしています。最大の課題は消費が少なく「売れないこと」に行き着きますが、一時的なブームを作るのではなく、地に足が着いた支援をしていきたいと考えています。
志俵政夫
広島県西部農業技術指導所 参事
●月刊「技術と普及」平成26年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載