高温登熟性に優れ縞葉枯病に強い水稲良食味品種「とちぎの星」
2015年08月21日
●育成経過
とちぎの星は、熟期が中生クラス(コシヒカリより1週間程度遅い)で、縞葉枯病抵抗性を持つ良食味品種の育成を目標に、平成14年、縞葉枯病抵抗性を有し大粒である「栃木11号」を母に、多収で品質並びに食味が優れる「栃木7号」(後のなすひかり)を父として人工交配した品種です。
高温登熟性については、平成19年から21年に県内及び埼玉県農林総合研究センター水田農業研究所(埼玉県熊谷市)の協力を得て、検定を行い選抜しました。縞葉枯病抵抗性については、平成17年からDNAマーカーによる検定を行い選抜しました。平成20年から県内8カ所で現地試験を行い栽培性や地域適応性を検討した結果、多収で食味が良く、大粒で玄米品質が優れていたため、平成23年に品種登録を申請し、平成27年3月に登録されました。
品種名の「とちぎの星」は、さまざまな災害にも打ち勝ち、燦然と輝く、栃木の星となって欲しいという期待を込めて命名しました。
「あさひの夢」(左)と「とちぎの星」(右)の圃場立毛のようす
●品種の特性
1)熟期があさひの夢より6日程度早く、コシヒカリより6日程度遅い中生品種です。
2)高温登熟性に優れ、玄米の外観品質が安定しています。
3)縞葉枯病抵抗性を有し、低農薬栽培ができます。
4)大粒で、あさひの夢より肥料を控えてもあさひの夢並に多収の品種です。
5)食味はあさひの夢より優れ、良食味の品種です。
6)あさひの夢より稈長が伸びやすくなっています。
玄米品質調査結果
※(注)H22年埼玉県熊谷市のデータ。単位は%
●栽培上の注意点
多肥栽培は玄米タンパク質含有量を高め、食味を落とします。また、あさひの夢より稈長が伸びやすいため、倒伏の危険性を高めますので避けてください。
執筆者
栃木県農業試験場 水稲研究室
伊澤由行