小粒の黒大豆新品種「くろこじろう」
2015年02月03日
小粒の黒大豆品種として、北海道や岩手県で栽培される「黒千石(※)」が広く知られていますが、このほかに、茨城県で栽培される「黒大豆小粒」や愛媛県の在来品種「ういろう豆」があります。しかし、「黒千石」は早生種のため関東地域向けではなく、また、「黒大豆小粒」や「ういろう豆」は関東地域で栽培できますが、茎が伸びやすく倒伏が多発するため、栽培しやすい品種とは言えません。
そこで、作物研究所では、倒伏が少なく栽培しやすい関東地域向けの小粒黒大豆品種の開発に取り組んできました。その結果、倒伏が少なく栽培しやすい小粒の黒大豆品種を育成しました。この品種は、茨城県で栽培される「黒大豆小粒」の後を継ぐ2代目の小粒の黒大豆となることを期待して、「くろこじろう」と命名しました。
※ 正式には「早生黒千石」と思われる
「くろこじろう」の特徴
●子実の大きさは「納豆小粒」より少し小さめの黒豆です。子実を割ったときに見ることができる子葉部分は緑色で、「黒千石」や「ういろう豆」と同じです。
粒の子葉色
子実の形態(左から、くろこじろう、納豆小粒、黒大豆小粒)
●倒伏が少ないため栽培しやすく、コンバイン収穫時の刈り残しによる損失を低減できます。
現地試験における成熟期の様子 (奥:くろこじろう、手前:黒大豆小粒)
●成熟期は「納豆小粒」とほぼ同じで、東北南部から関東、東海にかけての地域で栽培できます。
作物研究所(茨城県つくばみらい市、水田転換畑)における農業特性
(クリックで拡大します)
●ダイズシストセンチュウやダイズモザイクウイルスに対する抵抗性は「納豆小粒」と同程度です。
「くろこじろう」の今後の期待
これまでのところ、茨城県での栽培が始まり、実需者1社が高級納豆や甘納豆の製品化を進めています。
納豆を製造するメーカーでの納豆原料としての利用はもとより、みばえの良い豆菓子や豆餅、豆パンなどの原料にも利用できるので、6次産業化のアイテムとして地域振興に役立つことが期待されます。
執筆者
農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 畑作物研究領域
大豆育種研究分野
高橋浩司