温水を使って果樹白紋羽病を治療する
2014年09月22日
背景とねらい
白紋羽病によってナシやリンゴなど多くの果樹類が大きな被害を受けています。この病気は土中に生息している糸状菌(かび)の仲間である白紋羽病菌によって引き起こされ(写真1)、罹病した樹は根が腐敗して衰弱し、最後には枯れてしまいます(写真2)。白紋羽病の防除には化学農薬が使われますが、大量の薬液を土中に潅注するために環境への影響が心配されます(写真3)。
左上 :写真1 白紋羽病菌が蔓延したナシ樹根
右下 :写真2 白紋羽病によって枯死したリンゴ樹
そこで、環境に与える影響の少ない温水(お湯)によって病原菌を殺菌し、白紋羽病に罹病した果樹(ナシ、リンゴ、ブドウ)を治療する方法(温水治療法)を開発しました。
技術の概要
白紋羽病菌は他の糸状菌と比べると熱に弱く、35℃でほとんど死滅してしまいますが(図1)、果樹(ナシ、リンゴ、ブドウ)では45℃でも短時間であれば障害は発生しません。したがって、土の中を35℃以上、45℃以下に保つことによって、果樹には悪影響を与えずに白紋羽病菌を殺菌できます。この温度条件を満たすために、50℃の温水を罹病樹周辺の地表面に点滴して土の中にしみ込ませるように処理を行います。このようにして、白紋羽病にかかった果樹を治療します。
技術のメリット
●農薬を使用しない環境保全型の防除技術です。
●処理を実施した際の1樹あたりの費用(下記の温水供給機械を使用し、その購入費は除いた場合)は農薬使用時の約4分の1です。
技術の内容
温水治療を実施する場合には、「白紋羽病治療用温水点滴処理機」として日本園芸農業協同組合連合会(日園連)から販売されている機械などを使用して温水を供給します(写真4)。
手順は以下の通りです。
①罹病樹を中心として地表面に点滴器具(写真5)を置きます。
②保温するために点滴器具全体を農業用マルチフィルムなどで覆います(写真5)。
③点滴器具から50℃の温水を点滴します。
④地下30cmが35℃あるいは地下10cmが45℃に達した時点で温水の点滴を止めて終了します。
左上 :写真4 温水点滴処理機(上:処理機本体、下:器具運搬車、いずれも販売されているものと同型)
右下 :写真5 温水点滴器具と設置状況(上:販売されているものと同型の点滴器具、下:処理対象樹への設置の仕方とマルチフィルムによる被覆(器具の半分にのみ被覆))
点滴開始から終了するまでの時間は4~6時間で、その際の土中の温度の変化は図2のようになります。開始6時間後に点滴を止めていますが、その後も地下30cmの場所では長時間にわたっておおよそ35℃を保っており、白紋羽病菌が死滅するのに十分な温度が得られます。
上記の手順で処理を行うことによって白紋羽病の罹病樹が治療できます(図3)。
今後、ナシ、リンゴおよびブドウ樹以外の果樹の白紋羽病あるいは白紋羽病以外の病気についても、治療技術として利用できるように発展させていく予定です。
図3 白紋羽病に罹病したリンゴ樹に対する温水の点滴処理による治療効果
【参考資料】
▼白紋羽病温水治療マニュアル
▼果樹白紋羽病温水治療ワークショップ資料
執筆者
農研機構 果樹研究所 品種育成・病害虫研究領域
中村 仁