提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業のポータルサイト みんなの農業広場

MENU

注目の農業技術



薄皮丸なす-夏の定番!パリッとした食盛が人気の地域在来種

2014年06月10日

特徴と由来

●栽培地域 :山形県置賜地域

 「薄皮丸なす」は、山形県南部の置賜地域で栽培されている丸ナスです。形状は丸~やや卵型、皮が薄く柔らかいのが特長で、20〜30g程度で収穫され、主に漬物に用いられます。

dento_nasu_yamagata1.jpg
「薄皮丸なす」はその名のとおり、皮が薄く柔らかいのが特徴。主に漬物に用いられる

 その由来は明らかではありませんが、50年以上前に宮内町(現南陽市宮内) の沖田与太郎氏が新潟から来た行商人から種子を入手し、そこから収量および品質に優れるものを選抜したのが始まりとされています。そのため地域に出回った当初は「沖田なす」と呼ばれていましたが、「薄皮なす」「薄皮丸なす」と、次第に名称が変化してきたと言われています。

 この他にも在来ナスである「窪田なす」から皮の柔らかいものを選抜したという説もあります。いずれにしろ置賜地域における薄皮丸なすの人気は根強く、種苗会社育成による丸ナス品種が出回るようになった現在も広く栽培、消費され、ナスといえばこの品種を思い浮かべる人が多いようです。

栽培方法

 露地栽培がほとんどで、多くは3月中旬に播種され、田植えが終わる5月下旬から6月上旬にかけて定植されます。
 うね幅180cm、株間50cmの1条植えが標準的な栽植様式で、3本仕立てにしますが、生育後半は半放任とし、古葉や弱い枝を適宜除いて管理されます。

 おおむね9月末まで収穫・出荷されますが、旬は7月上旬から8月中旬です。
 草勢は一般的な品種に比較して弱いです。病害虫にも弱い傾向があり、とくに半身萎凋病の被害が多く見られるため、接ぎ木栽培されることが多いです。

食べ方

 へたを取り、よく洗ったナスを一晩漬け込むと食べ頃となります。浅漬にするとパリッとした歯ざわりが際だち、品種の特長をとくに楽しめますが、それ以外にもからし漬やこうじ漬、かす漬等、各家庭によりさまざまなレシピで食べられています。
 置賜地域では、ナスの漬物が夏のお茶うけの定番となっており、農産加工研修会を行うと大きな会場がすぐに満員になるほど、主婦の漬け方への関心は高いようです。

産地の動向

 薄皮丸なすの流通、消費はほとんど地域内に限られますが、漬物加工品は夏の農産物直売所に欠かせない定番商品となっています。

dento_nasu_yamagata2.jpg
「薄皮丸なす」の人気は根強く、出荷・販売向けから家庭菜園まで広く栽培されている

 そのため、漬物加工業者や農産物直売所からより早い出荷の要望があり、山形県置賜総合支庁では、半促成栽培やトンネル早熟栽培の試験研究を農業者とともに進め、流通業者と連携した研修会を開催して早期出荷技術の普及を進めています。
 「山形おきたま伝統野菜」への認定を契機に地域外にPR、販売する取り組みも始まり、これからの産地振興が期待されます。

執筆者
中川隆彰
山形県置賜総合支庁農業技術普及課 主任専門普及指導員

●月刊「技術と普及」平成25年6月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載