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麦作強害雑草「抵抗性スズメノテッポウ」の効果的防除法

2014年06月06日

背景とねらい
 スズメノテッポウ(写真1)は麦作のもっとも一般的な強害雑草で、特に水田裏作の麦畑で問題となります。除草剤を利用すれば容易に防除できるようになりましたが、最近になって除草剤を適切に使用しているにもかかわらず、一面にスズメノテッポウが繁茂する麦畑(写真2)が多くの地域で確認されています。これは除草剤が効かなくなった「抵抗性スズメノテッポウ」で、ひどい場合には収穫を放棄することもあります。新しい除草剤も開発されていますが、発生量があまりにも多いために、除草剤だけでは防除しきれない場合もあります。
 そこで、農研機構九州沖縄農業研究センターでは、福岡県農林業総合試験場、佐賀県農業試験研究センター、(公財)日本植物調節剤研究協会と共同で、抵抗性スズメノテッポウが繁茂した圃場でも効果的に防除できる総合防除技術を開発しました。


201406suzumeno_t_1.jpg  201406suzumeno_t_2.jpg
 :写真1 スズメノテッポウ
 :写真2 スズメノテッポウが繁茂した麦畑


防除技術の特徴
 写真2のような繁茂圃場では数千~2万個体のスズメノテッポウが発生します。土の中にそれだけたくさんの種子があるということなので、図1のような方法で土の中の種子の量を減らし、除草剤を効果的に使って防除します。


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図1 防除技術のしくみ


 麦の播種までに土壌表層にあるスズメノテッポウ種子の多くが発生します(図1-①)。発生したスズメノテッポウを非選択性除草剤で防除します(図2-②)。すると土壌表層は種子が少ない状態になります(図1-③)。下のほうにある種子を表層に移動させないように麦を播種します(図1-④)。播種後には効果の高い新しい土壌処理剤を処理します。


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図2 浅耕播種を活用した防除技術の作業手順(暦日は九州地域での目安)


 下のほうにある種子を表層に移動させない播種方法として、浅耕播種と不耕起播種があります。浅耕播種は耕起する深さを5cm程度で播種する方法です。不耕起播種は専用播種機を使って耕起をしないで播種する方法です。


実際の作業手順とポイント
 図2は浅耕播種の場合の作業手順です。水稲を収穫後に土壌が乾燥したら、できるだけ早く5cm程度の深さで耕起をします。できるだけ土が細かくなるようにするのがポイントです。この耕起を行うと麦を播種するまでに、よりたくさんのスズメノテッポウが発生し、土の中の種子が少なくなります。


 図3は不耕起播種の場合の作業手順です。不耕起なので水稲収穫後の耕起は行いません。浅耕播種の場合と異なり、播種後に非選択性除草剤と土壌処理剤と混用して散布するのがポイントです。ただし、除草剤の組み合わせによっては効果が劣る場合もあるので詳しくはマニュアルを参考にしてください。


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図3 不耕起播種を活用した防除技術の作業手順(暦日は九州地域での目安)


晩播と大豆輪作
 対策を行う最初の1~2年は播種時期を遅らせるとより効果的です。九州での麦類の播種適期は11月20日頃ですが、12月5日~10日ぐらいに遅らせると発生量はより少なくなります。大豆を栽培すると水稲を栽培した場合よりも明らかにスズメノテッポウの発生量が少なくなります。大豆を含めた輪作をしている場合には、発生量の多い圃場に優先的に大豆を栽培すると効果的です。


 写真3は対策3年目の圃場の様子です。スズメノテッポウの発生は問題とならない程度に減少しています。


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写真3 防除技術導入3年目の麦畑


おわりに
 本防除技術は、農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」の成果です。本防除技術のマニュアルを以下で公開していますので、詳細についてはこちらをご覧ください。
 ▼マニュアルはこちら


執筆者
農研機構 九州沖縄農業研究センター 水田作・園芸研究領域 雑草防除研究グループ
大段秀記