仙台曲がりねぎ-葉鞘部の曲がりと味、歯触りに特徴
2014年05月27日
特徴と由来
●栽培地域 :宮城県・仙台市岩切地区
発祥の地とされる仙台市岩切地区は、七北川沿いにある広く水田に囲まれた地域で、畑地はその多くは水田の中に点在するか河川敷にありました。そのため地下水位が高く、根菜類や立ちネギの軟白栽培が難しい地域とされていました。
1909年に地区住民の永野一氏がネギの優良品種の導入と育成、軟白技術の改良を試み、大正初期に栽培法として「やとい」という新技術を確立し、それに合う品種として松本系一本太ネギが選ばれました。
その後、自家採種が重ねられ、「やとい」の技術も徐々に周辺に伝わりました。地名をとって「余目葱」として名声を博すようになり、出荷名を「仙台曲がり葱」と統一され、東京市場へも出荷が行われるようになりました。
余目葱
栽培方法
本来の作型は、自家採種したものを9月中旬以降に播種、4月上旬頃に直立に仮植、7月20日以降から9月上旬に定植(やとい)し、収穫は9月中旬から11月下旬まで行われていました。
「やとい」とは、畝幅80~90cmの浅畝を作り、水平に近い角度(25度程度)でネギを寝かせて植え付け、葉身との分岐点まで3cm程度の厚さで葉鞘部を覆土する作業です。
寝かされて植え付けられたネギは、やがて立ち上がりながら生育し続けるので、葉鞘部の曲がりと軟白が同時に進行し、収穫を迎えます。
調製された曲がりねぎ
食べ方
覆土が浅いので、寒さにあたることで味、歯触りともに良く、鍋物には欠かせない具材となります。利用は一般の根深ネギと同じです。
産地の動向
これまで、地元の種苗会社で系統選抜された品種「余目一本」が仙台市内各地で生産され、とくに太白区長町、宮城野区岩切、若林区七郷などが代表的な産地でしたが、「やとい」および収穫作業が手作業であることなどの理由から、従来の栽培が年々減少している状況にあります。
しかし近年、耐病性が強く生育が旺盛な品種を春まきし、露地の「やとい」栽培とは別に10月からハウスに「やとい」、12月から曲がりネギを出荷する産地が出てきています。
執筆者
庄子正秀
宮城県仙台農業改良普及センター先進技術第1班技術次長(班長)
現 登米農業改良普及センター先進技術班技術次長(班長)
問い合わせ先:
仙台農業改良普及センター
●月刊「技術と普及」平成24年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載