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九条ねぎ-1300年の歴史を持つやわらかく甘みのある青ネギ

2014年05月22日

伝統の京野菜

●栽培地域 :京都府全域

 京都には、古くから都があり、宮廷や寺社への献上品や人々の往来に伴って、全国各地から優れた品質を持つ野菜が集まりました。
 こうした野菜が、京都の農家の長い歴史に培われた栽培方法によって改良が加えられ、茶道の懐石料理や寺院の精進料理、庶民の日常のおばんざいをはじめとした京の食文化とともに発展することで、京都特有の京野菜が生まれました。
 京都府では、明治以前からの導入栽培の歴史がある九条ねぎ・みず菜・聖護院だいこんといった37品目の野菜を京の伝統野菜に指定しています。

由来と特徴

 九条ねぎの栽培の始まりは、今から1300年ほど前の和銅4年(711年)、伏見稲荷大社の建立時までさかのぼります。その原種は浪速の国から伝来したとされ、京の伝統野菜の中でも最も古い栽培の歴史を持っています。
 京の都は、北から南にゆるやかに傾斜しており、都の南部に位置する九条付近に、野菜生産に適した有機物に富んだ土壌が堆積していました。
 この九条付近で、品質の良いネギが栽培されたことから、九条ねぎの名がつけられました。また、弘法大師が東寺付近で大蛇に追いかけられ、ねぎ畑に隠れて難を逃れられたとの逸話があり、付近の農家では、弘法大師の縁日である21日には、ネギを食べることを遠慮するという風習が伝えられています。

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九条ねぎ(提供:(公社)京のふるさと産品協会)

栽培方法

 本来、九条ねぎは、秋に播種し、春に仮植します。夏にいったん掘りあげて干しネギ(ネギ苗)とし、それを晩夏に定植して、秋冬に収穫を行うまで1年以上の期間をかけて露地で栽培されます。
 近年は、周年を通じた需要に対応するため、パイプハウスを利用した移植や直播による栽培も増加しています。
 京都市から京都市以南の地域で栽培が盛んですが、ハウス栽培が導入されてからは、京都府内全域で栽培されています。

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九条ねぎの栽培(提供:(公社)京のふるさと産品協会)

食べ方

 青ネギの代表的存在である九条ねぎは、やわらかく甘みのある美しい緑の葉がまっすぐに伸び、冬には糖分がゼリー状となって葉身内部に蓄積し、さらに甘みを増します。
 大変香りが良いことから、鍋物や煮物、ぬた、ネギ焼きをはじめ、うどんやそうめん、ラーメンの薬味等でも手軽においしく食べられます。

産地の動向

 京都では、環境と安心・安全に配慮した京都こだわり農法により生産され、高品質で京都らしい厳選された農林水産物26品目を京のブランド産品に認定し、首都圏や京阪神の市場を中心に販売を展開しています。
 九条ねぎは、京のブランド産品の主力商品のひとつであり、首都圏での需要が大きく伸びていることから、生産拡大に力を入れています。

執筆者
佐藤隆司
京都府農林水産部流通・ブランド戦略課 農業革新支援専門員 

●月刊「技術と普及」平成24年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載