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越津ねぎ-徳川将軍に献上されたあいちの伝統野菜

2014年05月20日

由来と特徴

●栽培地域 :愛知県津島市越津町

 越津(こしづ)ねぎは根深ネギの主要品種が属する千住群と、葉ネギの代表的な品種が属する九条群の中間的品種です。
 11~3月の冬どり栽培が主体で低温伸長性が強く、分げつが多くなります。葉・白根(葉身部・葉鞘部)ともに軟らかく食味に優れています。10~15℃でよく生育し、25℃以上になると生育が急に悪くなります。また、高温下では特に湿害に弱いため、栽培には排水が重要な条件となります。
 発祥は旧海部郡神守村越津地域(現在:愛知県津島市越津町)で、徳川三代将軍家光の時代(1623~1650)と言われ、現在は、「あいちの伝統野菜」にも選定されています。

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越津ねぎ

栽培方法

「育苗」
●播種
 播種量は10a当たり0.2~0.3Lで、畝幅125㎝の畝に4条まきします。
●移植
 梅雨期の湿害を回避するため、移植は畝幅70cm、株間10cmの移植床で2株ずつ植え、通気性を確保します。

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栽培風景

「本圃管理」
●植え溝掘り
 植え溝の深さは20cm、畝幅90cmを基準とします。植え溝に雨水が溜まらぬよう、植え溝と直結した明渠を設置し、排水対策を行います。
●定植
 7月下旬から8月中旬にかけて行います。苗は大きさを揃え、株間を10~15cmにして、1カ所に2株まとめて植えます。まっすぐな軟白部を作るため、根を少量の土でおさえるとともに、苗が倒れないよう葉も土でおさえます。

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●けずり込み
 定植10~15日後に第1回目のけずり込みを行います。この時、基肥を畝上において、肥料と土が混ざるようにけずり込みます。その後、15~20日おきに2回実施し、溝が全部埋まるようにします。1回のけずり込む深さは5~8cmです。なお、施肥は、基肥をN:P:K=16:12:16、追肥をN:P:K=7:0:7とします(kg/10a)。
●土寄せ
 10月上旬ごろから15~20日おきに3回程度に分けて、ネギローターで土寄せします。最終の土寄せから収穫までの日数は、冬どり栽培の場合40日以上が目安となりますが、降霜後は下葉が垂れ下がり、その上に土寄せしても崩れやすいため、11月中旬までには最終の土寄せを行います。

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食べ方

 軟白部、葉身部ともにやわらかく、両方ともおいしく食べられます。鍋料理やすき焼きには欠かせない食材です。

産地の動向

 主に愛知県の尾張地域(一宮市、江南市、あま市、津島市など)で栽培され、冬の定番野菜として地域に根付いています。
 尾張地域の秋冬ネギ作付面積は44.0ha、出荷量は1056tで、このうち86%を越津ねぎが占めています。
 生産者の高齢化が進んでいることから、省力、軽作業化として一部ではチェーンポット定植機の導入にも取り組んでいます。
 産地では「ねぎみそせん」や「ネギクッキー」など、越津ねぎを使用した菓子等の販売により、消費拡大にも取り組んでいます。

(写真出典 :農業あいち別冊『温故知菜 野の巻』愛知農業普及協会、2002)

執筆者
牧田恵里
愛知県海部農林水産事務所農業改良普及課野菜指導グループ技師 

●月刊「技術と普及」平成24年9月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載