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泉州水なす-大阪産(もん)のトップランナー

2014年05月14日

由来と特徴

●栽培地域 :大阪府泉南地区

 大阪産(もん)(※) といえば、泉州水なすをイメージする方が多いように、泉州水なすの歴史は古く、室町時代に書かれた教科書の1つである「庭訓往来(ていきんおうらい)」にも、貝塚市の澤(さわ)地区が水ナスの発祥と紹介されています。
 泉州水なすは、大阪府の南部、泉南地区で生産、消費されていた在来品種で、夏に畑で農作業をしていて、喉が渇いた時には、このナスを食べ、喉の渇きを潤したといわれるほどみずみずしさがあります。

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泉州水なす

 従来の泉州水なすの果皮は淡赤紫色でしたが、糠漬けにすると褐色に変化するため、味は素晴らしかったものの商品性では劣り、昭和の初めにデパートで試験販売した際には、あまり売れませんでした。
 その後、糠漬けにしても果皮が褐色に変化しにくい濃紫色の絹茄子の系統が栽培の主流となり、見た目も良いことから東京でも評判を得て、平成に入り人気が出てきました。

大阪産(もん)とは
dento_nasu_osaka7.jpg大阪府では、府内で栽培・生産される農産物、畜産物、林産物、大阪湾で採取され大阪府内の港に水揚げされる魚介類、大阪府域の内水面で生産・採取される魚介類とそれらを原材料にした加工食品を「大阪産(もん)」として、一体的にPRし、ブランド化を図っている。

栽培方法

 泉州水なすは、近年需要が増えたことから、露地栽培のほか、無加温半促成栽培、加温促成栽培が行われ、周年で生産されています。
 定植までの作業としては、接ぎ木セル苗を購入し、ポリポットに移植して1~2カ月育苗するのが普通です。本圃には株間50cm前後で定植し、主枝を3~4本に仕立てます。着果を安定させるために植物ホルモン処理は必須で、適度な樹勢と採光性を確保するため定期的に摘心、摘葉を行います。また、肥料や水を多く必要とするため、追肥や灌水のタイミングを逃さないよう注意します。

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栽培風景

食べ方

 泉州水なすは皮が柔らかくナス独特のアクも少なく、水分をたっぷり含んだジューシーな卵型のナスです。生食に適し、ほんのりと甘みを感じる果肉は、浅漬けでそのおいしさをいかんなく発揮します。
 また、最近では、サラダとしてメニューにとり入れる料理店もみられます。

産地の動向

 泉州水なすは、浅漬け用途で全国に知られるようになり需要が急激に増えました。収益率も高いため、泉佐野市、岸和田市、貝塚市等で栽培農家が増え、後継者も多く残っています。
 最近の栽培上の課題としては、高温障害により果皮のツヤがなくなる「ツヤなし果」の発生率が増え、対策が求められています。また、害虫のアザミウマ類では薬剤抵抗性の発現もみられます。効果の高い農薬が少なくなってきており、ハウス栽培では、天敵であるスワルスキーカブリダニを放飼するなど、環境にやさしい防除方法も定着しつつあります。

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泉州水なすの荷姿

執筆者
大阪府環境農林水産部農政室推進課 地産地消推進グループ 

●月刊「技術と普及」平成25年6月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載