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田屋なす(萩たまげなす)-加熱調理でペクチンが可溶化、「とろり感」が増す-

2014年05月13日

由来と特徴

●栽培地域 :山口県長門市田屋地域

 「田屋なす」は、山口県長門市の田屋地域で昭和初期から40年代にかけて栽培されていたナスである。昭和50年代に萩市の農家に種子が渡り、わずか2~3戸が自家採種により栽培を続けてきました。
 平成11年頃から、地元のJA・市・農林事務所および生産者が生産振興に取り組んだ結果、平成15年に萩市と長門市で生産部会が設立されました。大型の果実特性を生かし、500g以上の果実を「萩たまげなす」として商品化しています。
 1番果は600~700g、2番果でも500~600gと大果系のナスです。適期収穫すれば果皮色は濃く、柔らかく、種子はほとんど目立ちませんが、収穫が遅れて花落ち部の色が抜けるに従い、果皮や種子が硬化していきます。耐暑性に劣り、平均気温26℃を超える頃に果実肥大が極端に鈍くなります。
 一般のナスと比較して、加熱することにより多くのペクチンが可溶化し「とろり感」が増すとともに、遊離糖量が多く甘味を多く感じることから、食味評価が極めて高くなっています。

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500g以上の果実を「萩たまげなす」として商品化する

栽培方法

 無加温ハウスによる早熟栽培が主体で、12月末~1月中旬にかけて播種、3月末~4月上旬にかけて定植します。収穫期間は5月中旬から7月中旬と短くなっています。樹勢を強く維持し、青枯れ病や半身萎凋病を回避するため「トルバム・ビガー」や「耐病VF」を台木として接ぎ木栽培する。
 整枝方法は、主枝2本仕立て、2番花以降は隔花摘花、側枝はすべて除去します。このような方法で着果制限することで、500g以上の果実が株当たり3~5果収穫できます。

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着果制限し、株当たり3~5果の萩たまげなすを収穫する

食べ方

 生産者や旅館等の協力により多くのレシピ開発が行われました。最大の特徴である「とろり感」を生かすためには、大きめにカットすることが重要で、スライスする場合も1.5cm以上の厚さが必要です。
 食べ方としては、まるごと焼いた「焼きなす」や、縦半分に割って器に見立てた「グラタン風」、3cm程度の輪切りで「田楽」や「なすステーキ」、長さを生かした「なすソーメン」、また最近ではナスの輪切りをバンズにした「萩たまげなすバーガー」も開発されています。

産地の動向

 平成15年に「萩たまげなす部会」が設立され、平成24年の栽培状況は、萩市と長門市を合わせて12戸、64.4aとなっています。毎年部会で採種農家を決め、専用圃場で選抜、採種されています。
 販売については、価格固定の全量買い取りが実施され、山口県内や首都圏の量販店、飲食店等に出荷されています。
 ロットが小さく、日出荷量が不安定であるため、花へのホルモン処理数から出荷予測を立てて販売情報として活用しています。

執筆者
重藤祐司
山口県農林総合技術センター技術指導室 主査(前 山口県萩農林事務所) 

●月刊「技術と普及」平成25年6月号(全国農業改良普及支援協会発行)から転載