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カンショ新品種「こなみずき」

2013年12月25日

 カンショでん粉の約7割は糖化製品(異性化糖、水あめ、ブドウ糖)の原料、残りの3割が、和菓子、麺類、水産練り製品などの食品原料として使われています。しかし、カンショでん粉はゲル化(ゼリー状になること)しやすい反面、老化(ゲルが硬くなったり、ゲルから水分が抜けること)しやすい欠点があります。

 そこで、九州沖縄農業研究センターでは、食品の高品質化を可能にするでん粉を持つカンショ品種の開発に取り組んできました。その結果、耐老化性に優れる低温糊化性でん粉を有する品種「こなみずき」を育成しました。みずみずしいでん粉をもつ、希望のでん粉用品種の意味をこめて「こなみずき」と命名しました。


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画期的なでん粉をもつカンショ品種「こなみずき」


「こなみずき」の特徴
●こなみずきでん粉は従来のカンショでん粉よりも約20℃低い温度でゲル化します。
●こなみずきでん粉は耐老化性に優れ、でん粉ゲルを低温で保存しても硬くなりづらく、水も分離せず、ぷるぷるとしたみずみずしい食感が長持ちする食感改良効果があります。
●こなみずきでん粉はゲルの保形成が優れます。
●標準栽培におけるいもの収量は従来品種の「シロユタカ」並で、長期透明マルチ栽培では「シロユタカ」よりも劣ります。
●病害虫抵抗性は「シロユタカ」並みで、貯蔵性は「シロユタカ」よりもやや優れます。


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こなみずきでん粉ゲル(左)は、冷蔵4日後でも弾力性があるが、従来カンショでん粉ゲル(右)は弾力性がなくなり、ひび割れてしまう


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こなみずきでん粉ゲル(左)では、3週間冷蔵しても水の分離は認められないが、従来カンショでん粉ゲル(右)では、水の分離がかなり認められる


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4%のでん粉濃度でゴマ豆腐を作ると、保形成が優れるこなみずきでん粉(左)では形は崩れないが、従来カンショでん粉(右)では、崩れてしまう


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(クリックで拡大します)


「こなみずき」今後の期待
 鹿児島県を中心とした南九州で栽培が普及しています。
 こなみずきでん粉には、食感の改良ならびに品質保持の効果があるため、和菓子、水産練り製品、麺、パン、餅など、さまざまな食品で新たな付加価値をもつ商品の開発が進んでおり、すでに商品化され販売されているものもあります。
 今後、さらにこなみずきでん粉の需要が拡大することで、地域振興に役立つことが期待されます。


執筆者
農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 畑作研究領域
サツマイモ育種グループ
小林 晃