省力栽培ができ、果実ボリュームに優れるナス新品種「省太(しょうた)」
2013年11月08日
福岡県は全国有数の冬春ナス生産地であり、品質の高い中長ナスは博多ナスとして知られています。
冬春ナス栽培では、栽培期間を通じて着果や果実肥大を安定させるため、開花時に着果促進剤を散布(以下、着果促進処理)しなければならず、農家の大きな負担となっています。また、気温が低い冬季には生育が抑制されるため、曲がり果や首細果が発生し果実品質が低下しやすい傾向があります。
育成の経過
果実の食味、品質が優れる「筑陽(ちくよう)」と「黒陽(こくよう)」(いずれも(株)タキイ種苗)を種子親とし、農研機構野菜茶業研究所が育成した単為結果性ナス系統「AE-P03」および「AE-P08」を花粉親とする2つの固定系統を育成し、それを交配してできた単為結果性のF1(雑種第1代)品種が「省太」です。2012年2月に品種登録出願しました。
品種特性
「省太」は、栽培期間を通じて安定した単為結果性を発現し、着果促進処理が不要となることから、現行栽培より総労働時間を約2割も削減することができます。
また、従来品種と比較して曲がり果や首細果などの不良果が少なく、果実の首径および最大径が大きく、果皮の光沢があるなどの外観品質が良いことが特徴です。
さらに収穫果数は、従来品種よりやや少ないものの、1果重が重くて果実品質が優れるために、商品果収量は従来品種と同等です。
総合的な食味評価は、従来品種と同等の良食味であり、中でも焼きナスにした場合の歯ごたえのある食感や果実の甘みが優れます。
総労働時間 1,568時間 ⇒ 1,232時間
「省太」の導入による省力効果(10a当たり)
研究成果の活用
規模拡大が容易となることから、冬春ナス生産農家の経営の安定化が図られ、福岡県産ナスの生産振興が促進されると期待されています。
執筆者
福岡県農業総合試験場 野菜部 施設野菜チーム
中園堯士(ナカゾノ タカシ)