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果肉が黄色く甘いキウイフルーツ新品種「東京ゴールド」

2013年09月25日

育成の経過
 近年、果肉が黄色で酸味が弱く、甘みが強い品種が市場に流通し、消費者のキウイフルーツに対する意識の変化がみられています。そのような中、生産者からは、上記と同様の肉質を持ち、栽培しやすく、特徴的な形質を持つオリジナル品種の作出が要望としてあがっていました。
 果実形態が特徴的であるとして、1998年に都内キウイフルーツ生産者が発見した樹を当センターで繁殖し、継続して特性調査したところ、既存品種との特性差異が確認されたことから「東京ゴールド」として命名し、2013年7月29日、品種登録されました(第22590号)。


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「東京ゴールド」の果実 


樹体特性
 発芽期は「ヘイワード」より約1週間早い4月上旬、開花時期は「ヘイワード」より約2週間早く5月中旬です。新梢葉腋のアントシアン着色はなく、新梢の毛じの密度は粗、花穂の着生は多く、側花の数は極めて多いです。


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果実特性
 果実の大きさは約100gと中程度。フルメット処理(5ppm)により果実肥大促進効果がみられ、果実重が約40%増加します。
 果皮の色は暗褐色、果形は逆涙型で特徴的な外観です。果肉は鮮やかな黄色で、糖度が15~16%と高く、多汁で風味、食味とも良好です。追熟は「ヘイワード」と比べて容易で、1週間程度で可食状態となります。


栽培方法
 樹勢が強く、特に黒ボク土壌などの肥沃な土壌では樹冠の拡大も早いため、樹間は充分にとります。樹冠が広がりすぎるときには、間伐等により1樹あたりの樹幹面積を広げ、樹勢を落ち着かせることが必要です。
 側花が非常に多いほか、新梢発芽率、着花性も高く短果枝にも良く着果するので、貯蔵養分の消耗を避け、初期の果実肥大を促進するため、摘蕾を徹底します。
 弱い結果枝についてはすべて摘蕾し、結実させないようにします。着果過多などにより果肉の黄色が薄くなることがあるので注意が必要です。
 また、本品種は4倍体品種であることが明らかとなっています。受粉に際しては、同じく4倍体品種で開花が同時期の「孫悟空」が適しているほか、輸入花粉の利用も可能です。


2013kiwi_t_gold_2.jpg  2013kiwi_t_gold_3.jpg
「東京ゴールド」の着花()および着果状況(


収穫時期と収穫の目安
 成熟期は10月下旬~11月上旬です。10月下旬には糖度が約8%で、追熟果の糖度は約15%となります。
 収穫時期を遅らせると糖度が高くなり、果肉の黄色も濃く品質が向上しますが、果実表面の萎凋や貯蔵性の低下、降霜による果肉への影響などを考慮し、どの時期まで遅らせることができるか、収穫時の糖度、果肉色、硬度に基づく指標作りなどについては今後検討が必要です。


 2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることが決まり、今後、ますます注目度が上がる「東京ゴールド」。生産拡大に向けて、都内生産者への穂木の配布を行ったほか、全国の果樹種苗会社で苗の販売が開始されており、今後、全国各地での生産体制の確立が望まれます。


執筆者
(公財)東京都農林総合研究センター
園芸技術科 果樹チーム
河野 章