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ゼリーのような新食感! カンキツ新品種「大分果研4号」

2013年09月02日

●育成経過
 「大分果研4号」は、1995年に大分県柑橘試験場(現大分県農林水産研究指導センター農業研究部果樹グループ)において、高糖系温州「大津八号」(「大津四号」の兄弟系統)にオレンジの血を引く「天草」の花粉を交配して育成した交雑品種です。年内収穫・出荷が可能な早生カンキツとして選抜され、2009年3月6日に品種登録されました。
右 :「大分果研4号」の結実状態


●品種特性
 樹勢は中程度、樹姿は開張性で、枝梢には短いトゲが発生しますが、結実が始まって樹勢が落ち着くと消失します。
 果実は170g程度の扁球形で、11月下旬には濃橙色に完全着色し、クエン酸含量も1%を下回ります。糖度は12月上旬で11~12度とあまり高くはありませんが、ほどよい甘さでさわやかなオレンジの香りがあり、皮がむきやすく、じょうのう膜が薄くて軟らかいため"ゼリーのようなプルプルとした食感"があります。カットフルーツにすると、食感や食べやすさがさらに向上します。

 この果実の特徴をより多くの方に知ってもらおうと、「ゼリーオレンジ・サンセレブ」(登録商標)という"商品名"で、主に年末贈答向けに販売しています。


  
「大分果研4号」の果実()とカットフルーツ(


2013kankitsu_kaken4_hyo.jpg
(クリックすると拡大します)


●栽培上の留意点
 土壌が比較的浅く、排水や日当たりが良好な緩傾斜地が適地ですが、9月からの透湿性シートマルチ被覆によっても、糖度上昇や着色向上といった品質向上効果が十分に期待できます。


 着花性は非常に良く、隔年結果性は低いのですが、果形がバラツキやすい傾向(ネックが発生しやすい)があるので、摘果で果形を揃える必要があります。

 さらに、果実の成熟が進むにつれて、果梗部のクラッキング(右写真)から水腐れ症が発生しやすくなりますので、果実肥大期のカルシウム剤散布や袋かけ栽培が有効です。
 また、果実は軟らかく傷みやすいので、収穫・出荷時の取り扱いにも注意が必要です。

 なお、本品種は大分県が育成したオリジナル品種であるため、苗木の供給については現時点では大分県内に限られています。


執筆者
大分県農林水産研究指導センター農業研究部
果樹グループ カボス・中晩柑チーム
信貴 竜人