生食・調理兼用トマト新品種「湘南ポモロン」
2013年07月03日
●育成の背景とねらい
消費者ニーズに対応した地産地消の推進を目的に、神奈川県内ではJAを中心に大型直売所の整備が進められています。本県では、多様な消費者ニーズに適合し、直売に適する新規性の高いトマトF1品種の育成に取り組んでまいりました。国内で栽培されている大玉トマト品種は、生食には適していますが、酸味が強く、加熱によって煮崩れしやすいなど、調理には向きません。一方、イタリアや米国で利用されているサンマルツァーノやローマ系品種は、調理には向いていますが、糖度や酸度が低く、生食には向きません。
そこで、生食・調理兼用という特性に新規性を見いだし、育成を行いました。果実色については、赤色系統の「湘南ポモロン・レッド」と橙色系統の「湘南ポモロン・ゴールド」を同時に育成することにより、サラダに利用したときの彩りの良さと、袋詰め販売したときの商品性の向上も追求しました。
湘南ポモロン・レッド(左上)と湘南ポモロン・ゴールド(右下)
●特性
「湘南ポモロン・レッド」は、濃桃色で長円筒形の果実がなるF1品種です。着花数が多く、1果当り60~80gの果実が一果房あたり5~7果程度着果し、果実の揃いも良好です。13~15段果房まで収穫する場合は、1株当たり4~6kgの収量が得られます。果肉は鮮赤色で硬く、大玉トマトと比較し、糖度、酸度は同程度で生食用として利用でき、アミノ酸は1.2培、リコペン含量は1.5倍あり、加熱調理にも適しています(表1、2)。
「湘南ポモロン・ゴールド」は、橙黄色で長円筒形の果実がなるF1品種です。着花数が多く、1果当り60~80gの果実が一果房あたり6~8果程度着果し、果実の揃いも良好です。13~15段果房まで収穫する場合は、1株当たり4~6kgの収量が得られます。果肉は黄色で硬く、大玉トマトと比較し、糖度は同程度で生食用として利用できます。また果肉が硬く煮崩れしにくいため、加熱調理にも使用できます(表1、2)。
●栽培上の留意点
両品種とも萎凋病レース1及びレース2、半身萎凋病並びにトマトモザイクウイルスTm-2a型に抵抗性を持ちます。根腐萎凋病、褐色根腐病及びネコブセンチュウには抵抗性を持ちませんが、Tm-2a型に対応した多くの台木を利用することができます。
収穫適期に関しては、大玉品種に比べ、棚持ちが良く、また完熟に近くなってから味が乗ってくるため、完熟果での収穫を基本としています。
なお、神奈川県内の直売所やスーパーで果実を購入することはできますが、種苗に関しては、現在販売等は行っておりません(2013年6月現在)。
執筆者
神奈川県農業技術センター 生産技術部 野菜作物研究課
保谷明江