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高糖度のカンキツ新品種「あすみ」

2013年03月14日

●育成経過
 1992年に、現(独)農研機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点にて、興津46号('スイートスプリング'×'トロビタ'オレンジ)に'はるみ'を交雑して得られた個体です(写真1)
 その有用性から、2003年に「カンキツ第9回系統適応性・特性検定試験」に追加系統として供試されました。2011年8月の成績検討会にて、福岡、大分、長崎、宮崎の各県から有望と評価され、品種登録が決定しました。12月に品種登録出願を行い、翌2012年3月に出願公表されました。
 品種名の「あすみ」は、'はるみ'の子であることと、明日のカンキツ産業を担うようにとの期待を込めて命名されました。


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写真1'あすみ'の果実


●品種特性
 成熟期は、1月下旬~2月上旬で、果実重は平均150g程度です。糖度が15%程度と高く、酸度は1.1%程度で、芳香もあることから、食味に対する評価は非常に高いです(表1)。剥皮性は中程度ですが、種子は平均1.5粒と少なく、じょうのう膜が柔らかいため、比較的食べやすい品種といえます。浮皮の発生はみられませんが、裂果が生じる場合があります。露地栽培では完全着色しにくく、緑斑が残ります。機能性成分のβ-クリプトキサンチンを多く含みます(ウンシュウミカン'興津早生'と同程度;果肉100gあたり1.66mg)。



 樹勢は中程度で、樹姿は直立性と開張性の中間です(写真2)。隔年結果性は中程度です。トゲの発生が多く、長いです。そうか病には強いですが、かいよう病に弱いです。


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写真2 高接ぎ樹の様子


●栽培上の留意点
 土壌および気象条件に対する適応範囲は広く、さまざまな柑橘産地で栽培が可能で、シートマルチなどにより水分ストレスを与えなくても、高糖度の果実を生産することが可能です。
 かいよう病の発生防止と良好な着色のために、施設栽培を行うことが推奨されます。施設栽培では、裂果防止のために、加温開始期や土壌水分管理に注意する必要があります。


執筆者
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
果樹研究所 カンキツ研究興津拠点
太田 智